「副首都」「基礎自治体」「大阪都構想」とは?特別区制度はなぜ必要?今さら聞けない基礎知識を解説。

2020.09.26
  • 大阪都構想とは大阪府―大阪市の二重行政をなくし、住民サービスの充実を図る政策。他にも、大阪市民以外にも影響があるとされています。
  • 副首都とは、東京が災害に襲われたときに備えたバックアップ機能を持つ自治体。東京一極集中是正にも効果があるといわれています。
  • 基礎自治体とは、、自治制度のある国の行政区画の中で最小の単位のこと。市町村がそれにあたります。
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2度目となる大阪都構想の住民選挙が202011月に迫ってきました。

大阪都構想とは、大阪市民の住民投票ですし、その言葉から大阪府が大阪都になり、松井大阪市長が大阪府から独立して大阪都になると思っている人もいるかもしれませんが、そうではありません。

そこで、そもそも「大阪都構想とは」をはじめ、今さら聞けない大阪都構想にまつわる基礎知識となる重要ワードについて解説したいと思います。

全国での話題度は高くない?「大阪都構想」実は大阪市民も影響ある

この住民選挙は大阪市民が対象ということもあり、またコロナ禍ということもあるのでしょうか、あまり全国区のニュースなどで報じされることはありません。

確かに直接関係してくるのは、大阪市民だけかもしれませんが、大阪都構想が実現することで、大阪市民のみならず、日本の自治体の在り方も変わっていくかもしれない日本国民なら影響することが考えられる重要な住民選挙といえます。

大阪都構想とは

そもそもの話になりますが、「大阪都構想」とはどんなものなのでしょうか。

大きなポイントとして「二重行政の解消」「住民サービスの充実」、そして「国際競争力の向上」「自治体の行政の在り方」「副首都としての役割」とポイントごとに解説していきます。

二重行政の解消

大阪都構想の旗振り役である維新(大阪維新の会)も盛んに訴えているところが「二重行政の解消」です。

具体的には、病院、学校、図書館などの行政・サービスが、大阪市内にあっても、大阪府営のものと、大阪市営のものがあり重複しているという無駄です。

分かりやすい例では、大阪府立大学と大阪市立大学です。大阪府と大阪市がそれぞれ大学を設置し、2019年に両大学の運営法人が経営統合され、「公立大学法人大阪」が誕生しました。

しかし、県と市がバラバラに大学を設置すること自体は大阪に限った話ではなく、全国で行われています。

しかも、どちらも定員割れをしているわけではなく、弊害が生じておらず、二重行政の象徴とは言い切れないのが実情です。

確かに重なっている部分はあるかもしれませんが、嘉悦大学の報告書では二重行政解消効果は数十億円にとどまり、1兆円の経済効果から明らかに程遠いことがわかります。

住民サービスの充実

続いての大阪都構想が実現したらいわれていることが「住民サービスの充実」です。

大阪都構想が実現すると、病院、学校、図書館などや道路などのインフラ整備は大阪市から大阪府に移譲されます。

そして、新しく再編された4区(淀川区、北区、中央区、天王寺)は、各区でより住民に寄り添った子育て支援や福祉・介護を含めた住民サービスを担当するようにします。

各区長は選挙で選出され、各区で独自に政策を決められるため、切磋琢磨が起き、より住民サービスが充実できるのではとされています。

具体的で分かりやすいのが、東京都千代田区です。先日、千代田区は独自に、コロナ禍での給付金として千代田区民に12万円の支給を決めました。

これは千代田区独自の政策であり、各区が予算に応じて、区民の要望を感じながら独自のサービスができるようになるのです。

というのも、現在の人口は、淀川区約60万1,000人、北区約77万6,000人、中央区約72万4,000人、天王寺約64万1,000人もおり、ひとつの区だけで大阪府内で人口3位の東大阪市(約51万人)より多いのです。

これらを今は大阪市として200万人以上の行政を行っており、区分けすることでより身近なサービスが展開できるというわけです。

大阪市民以外も影響がある大阪都構想

ここまで見ていくと、やはり影響があるのは大阪市民だけという印象も受けますが、大阪都構想が実現することで、日本の自治体行政そのものにも影響があるのです。

国際競争力の向上

現在日本は政治行政も経済も東京一極集中。東京都だけ地方交付税交付金を受け取っていないことからも分かる通り、東京のみが正直潤っています。

それもあり、国際競争力は、「世界の都市グローバル度ランキング」(経営コンサルティング会社のA.T. カーニーとシカゴ国際問題評議会調べ)にて東京はニューヨーク、ロンドン、パリにつづいて第4位。

しかし、大阪は47位と、イスラエル第2の都市テルアビブ(46位)のひとつ下という結果で、国際競争力は決して高いといえません。

大阪都構想が実現することで国際競争力の向上につがげることはできるのでしょうか。

たとえば道路などのインフラです。東京を例にすれば分かりやすいのですが、東京外環自動車道は東京のみならず首都圏全体を広域に走る高速道路ですが、今の大阪の体制では、大阪市が立案しても周辺の市で、対立しているような政党出身の市長の場合、実現しない可能性があります。

また、大阪市は大阪市内のことばかりに目を向けるため、広域なサービスの拡充という考えは持たなくなります。

大阪府が一元してサービスを提供することで広域に物事を捉えられ、おのずと国際競争力向上に向けての政策も考えられやすいようになります。

2025年には大阪万博が開催

2025年に大阪万博が行われます。万博は大阪をアピールできる絶好のチャンス。

会場は大阪夢洲ですが、万博にともないホテルの整備、道路の拡張などの整備は必須。その際に堺市など周辺の市を含めた大阪としての広域サービスの実現には今の二重行政を解消しなくてはいけないという声も大きくなっているわけです。

自治体の行政の在り方

二重行政の話が盛んに出ますが、多かれ少なかれどこの県―市でも重複した行政・サービスを行っています。

大阪都構想が実現し、メリットが多くみられるようであれば、日本の国全体における行政の在り方が変わっていくのではないでしょうか。

より実現が叫ばれそうなのが「道州制」

現在の都道府県制を廃止して、日本を7つの道と州に再編するというもの(7つ以外の再編案もあり)。

これにより、今まで県が行っていた行政サービスの広域的なものは州に、細かい住民サービスは市に移譲され、無駄のない税金の使い方が実現するのではというものです。

道州制が実現すれば、日本の自治体行政そのものが変革となり、この面でもやはり大阪都構想の可否は注視していく必要があるでしょう。

副首都としての役割

詳しくは、「副首都とは」にて後述しますが、大阪が国際競争力を身に着けることが、大阪が副首都構想の実現にも弾みがつきます。

副首都があれば、仮に東京が地震などで壊滅状態となり政府機関が機能しなくなったとしても、副首都である大阪に機関があれば代行でき、日本全体の動きを止めずに済みます。

災害時の緊急対策以外にも副首都が成立することで全国的なメリットもあります。

副首都とは

副首都とは、首都東京のバックアップ機能を持つ、危機管理専門の省庁をおく構想のことです。

よく勘違いしやすいところですが、大阪に首都を移転するということではなく、あくまでもバックアップ機能です。

過去にも何度も首都移転論が日本でも起きていた

首都移転構想は、古くは河野太郎氏の祖父、河野一郎(当時建設大臣)が浜名湖畔に首都機能を移転することで検討していたことにはじまり、バブル景気時、地下鉄サリン事件が起きた時など事あることに叫ばれ続けています。

この首都移転論が最も具体化されたのが、1999年「国会等移転審議会」が候補地として3地域を選定したときでしょう。

移転候補として、栃木・福島地域、岐阜・愛知地域、三重・畿央地域が挙げられました。ただ石原慎太郎東京都知事の根強い首都機能移転反対論、この時期になって首相官邸、総務省、外務省などの庁舎も次々に建て替えられるなど官僚の強い抵抗もあって、首都移転論は頓挫します。

東日本大震災をきっかけに必要論が再熱

また、首都移転構想が再燃されたのは2011年の東日本大震災です。

もし、今後、近い将来起こる可能性が高いとされる首都直下地震が起きてしまったり、映画「シン・ゴジラ」のように東京が壊滅状態になった場合、今の東京一極集中体勢では、日本全体の動きが停滞してしまい、日本全体が壊滅してしまいます。

そこで、今までの首都移転ではなく、東京に政治行政の中枢は残しておき、大阪をはじめとした日本の別の都市にバックアップ機能のある副首都を設ける構想が高まっているのです。

危機管理専門をはじめとした各省庁の第2分庁的な組織を大阪に作ることで、仮に東京が機能不全に陥っても行政が滞ることはないようにしたいわけです。

副首都は全国的なメリットも

大阪に副首都ができることで、現在の政治体制にも変化が生じるとされています。

今は、東京に政府機関が集中していることもあり、官僚や政治家はやりたい放題な部分が見られます。

副首都ができ、副首都の機関がバックアップ機能だけでなくチェック機能も付帯できれば、行政サービスなどが日本全体に滞りなく行き届き、地方格差の是正も期待されるわけです。

世界的にみて副首都は存在する?

世界的に見て副首都が設けられている国はあるのでしょうか。

現在のところ、副首都がある国はありません、

アメリカのような国土の広い国は、州ごとに行政を担っているため、そもそも首都が2つある必要はなく、逆に国土が広くない国は、そのなか2つの首都を設けてもメリットは少ないカラダと考えられます。

有名なところでは、ブラジルはリオデジャネイロからブラジリアに首都を移転、オーストラリアではシドニーとメルボルンが首都機能を争ったのち、中間地点にあるキャンベラに首都をしたような事例はあるものの、これらも今もリオデジャネイロやシドニーは経済の中心地であるように、国会等一部機能のみを移転するのが一般的となっています。

基礎自治体とは

基礎自治体とは、自治制度のある国の行政区画の中で最小の単位のことです。

具体的には、県では各市町村、東京では、東京市はなく東京23区の各区と、各市町村というわけになります。

大阪は、現状では大阪市、堺市などの各市町村ですが、大阪都構想が実現することで、大阪市がなくなり、4区に再編される各市が基礎自治体ということになります。

基礎自治体と広域自治体、政令指定都市の違い

基礎自治体に似たワードで、広域自治体、政令指定都市というものがあります。

まず、広域自治体は、今の体制でいえば、都道府県になります。上記で説明した道州制が実現すれば、各道や州が広域自治体となります。

また、政令指定都市とは、法定人口が50万人以上を擁する市のうち、政令で指定された場合に、一般市から移行したもので、大阪市、堺市などがこれに当たります。

つまり政令指定都市になると、市のなかに区を設けることができますが、この区は自治制度はなく、区長も選挙で選ばれるものではありません。

東京は、東京23区の上に東京市があるわけではなく、各区で自治権があるため、各23区が基礎自治体となるわけです。

コロナ禍で投票率低下が懸念される

前回の1回目、2015年に行われた大阪都構想の住民投票の投票率は66.83

他の選挙での投票率に比べると高い投票率ではありますが、約3割の大阪市民が投票を行わなかったわけです。

今回はコロナ禍で、高齢者を中心に投票所に行く懸念を持っている人も少なくなく、また維新などが行う住民説明会も前回に比べて人数を削減し、Zoomなどを使うなどしても半減、

どこまで大阪都構想の理念がきちんと伝わるか心配されており、投票率の低下も懸念されています。

前回も、単に住所が変わるのが嫌などの理由で反対に投票する人も少なくなかったとされており、実際の明日からの生活が変わる投票、大阪市民はひとりひとりが持つ1票を大事にして欲しいです。

大阪都構想が否決の場合、松井市長は退任?

前回の1回目大阪都構想住民選挙は接戦ながら否決となり、当時の橋下徹大阪市長は政治の世界から退く決断をしました。

今回の大阪都構想選挙でも、橋下氏同様、松井大阪市長が否決の場合、退任すると明言しています。

果たして、松井市長そして維新にとって背水の陣となる今回の大阪都構想住民選挙。

結果はどう市民が判断するのでしょうか。

まとめ

今回は、大阪都構想をはじめ、副首都、基礎自治体といった大阪都構想にまつわる重要ワードの解説を行ってきました。

大阪都構想の可否は大阪市民、大阪府民のみならず日本中の自治体行政に影響するようなもの。

ただ単に今の目の前の生活だけでなく、将来的に子や孫が住みやすいと感じる街づくりができる形にしていって欲しいものです。