「大阪都」に名称変更?大阪都構想が可決すると名前はどうなる?今さら聞けない基礎知識を解説。

2020.09.29
  • 大阪都構想で大阪府は大阪都になれるの?法律や政令の整備、住民の過半数の賛成が必要
  • 4つの特別区の名称は「方角・位置・地勢」の三つを要素に決定する。24地域自治区は現状の24区の名称を残す方針
  • 福祉や財産管理、情報システムまで幅広い業務を担う巨大組織一般事務組合が誕生
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今年11月1日、いわゆる大阪都構想の賛否を問う「大阪市民」による住民投票が行われる予定です。 

大阪都構想が可決されると大阪市は廃止分割され、名称も4つの特別区ごとにそれぞれ変更されることになります。 

本記事では、「大阪府」は「大阪都」に名称変更できるのか、また特別区の名称変更などはどうなるのかといった基礎知識について解説します。 

大阪都構想で大阪府は大阪都になるのか

大阪府の吉村洋文(よしむら ひろふみ)知事は9月22日に行われた記者会見で、大阪都構想が可決された場合は大阪府を「大阪都」へ名称変更する考えを示しました。 

大阪都構想可決後の大阪府の名称については、前回の住民投票において反対派から有権者に誤解を与えると厳しく指摘を受け批判の的となっていました。 

このたびの吉村洋文知事の発言はこうした反対派からの批判をかわす狙いがあるとみられ、特別区移行日と同じ202511日に大阪府を「大阪都」に名称変更したいと述べています。 

ただ、大阪住民の中には「大阪府」という名称に愛着を持つかたもいることから「大阪都」に名称変更するか、そのまま「大阪府」の名称を残すのかを住民投票よって問うとしています。 

都構想というネーミングの重要性

前回(2015年)の住民投票では大阪都構想というネーミングが実態と大きく違い、大阪市民に誤解を与えているといった指摘がなされたことで、大阪都構想そのものへの不信感につなったことが否決の要因の一つであるとされています。 

そのため今回の都構想では、大阪都構想というイメージどおり東京23区の制度に近づけた制度設計に変更していることが大きな特徴です。 

大都市地域における特別区設置に関する法律の制定

これには2012年8月29日に可決、成立された「大都市地域における特別区設置に関する法律」の制定が大きな力となりました。 

これで、大阪府から大阪都に名称変更するための法整備と住民の賛成が得られれば、大阪都構想の名のとおり大阪府は大阪都になり、法令上も東京都と同種の都市としてみなされます。 

今後名称変更に必要な法律を整備し、住民の過半数の賛成が得られれば大阪都構想のネーミングどおり「大阪都」が生まれることになります。 

4つの特別区の名称は?

今回示されている大阪都構想の案では大阪市を4つの特別区に分割するとしており、特別区設置協定書にはすでに特別区の区域が定められています。 

それぞれの特別区は「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」の4つの名称で分けられています。 

これらの名称は、「方角・位置」「地勢等」をもとに歴史的な由来などを考慮しながら既存の24区の名称を参考に定められています。 

尚、特別区の中には地域自治区が設置され、特別区の行政事務をサポートしますが、その名称も都構想可決前の24区の名称を残こすように配慮しています。 

ただし、町の名称については、特別区が設置される前日までに、地域の歴史などを考慮し住民の意見を踏まえて大阪市長が定めるとして現段階では未定の状態です。 

4つの特別区の区数と区割り(案)

前回2015年5月の大阪都構想案では、大阪市を5つに廃止分割するとしていましていましたが、今回の案では4つの特別区を制定するとしています。 

4つの特別区設置予定表 

  • 区数:財政基盤の安定を考慮 
  • 区割り:財政状況の均衡・人口バランスを重視 
  • 4区内人口:2,700万人 
特別区名 区割り 本庁舎 
淀川区 此花区、港区、西淀川区、淀川区、東淀川区 現淀川区役所 
北区  北区、都島区、福島区、東成区、旭区、城東区、鶴見区 現大阪市本庁舎 (中之島庁舎) 
中央区 中央区、西区、大正区、浪速区、住之江区、 住吉区、西成区 現中央区役所 
天王寺区 天王寺区、生野区、阿倍野区、東住吉区、平野区 現天王寺区役所 

尚、各特別区ごとの住民数は明確になっていませんが、現状の24区の住民数を合算した数になると思われます。 

一般事務組合・地域自治区の設置

4つの区よって行政サービスの効率化を図るのが基本的な考えですが、業務によっては専門性が高いものもあり、そうした業務の専門性の確保や行政サービスの公平性及び効率性を図るために、区の業務を支える別の組織が必要となります。 

それが一般事務組合です。構成人員は一般職員310人を予定しており、これは全国でも例のない巨大組織となります。 

淀川区 

地域自治区の名称 地域自治区の区域 
此花地域自治区 大阪市此花区の区域  
港地域自治区 大阪市港区の区域 
西淀川地域自治区 大阪市西淀川区の区域 
淀川地域自治区 大阪市淀川区の区域 
東淀川地域自治区 大阪市東淀川区の区域 

北区 

北地域自治区 大阪市北区の区域 
都島地域自治区 大阪市都島区の区域 
福島地域自治区 大阪市福島区の区域 
東成地域自治区 大阪市東成区の区域 
旭地域自治区 大阪市旭区の区域 
城東地域自治区 大阪市城東区の区域 
鶴見地域自治区 大阪市鶴見区の区域 

中央区 

中央地域自治区 大阪市中央区の区域 
西地域自治区 大阪市西区の区域 
大正地域自治区 大阪市大正区の区域 
浪速地域自治区 大阪市浪速区の区域 
住之江地域自治区 大阪市住之江区の区域 
住吉地域自治区 大阪市住吉区の区域 
西成地域自治区 大阪市西成区の区域 

天王寺区 

天王寺地域自治区 大阪市天王寺区の区域 
生野地域自治区 大阪市生野区の区域 
阿倍野地域自治区 大阪市阿倍野区の区域 
東住吉地域自治区 大阪市東住吉区の区域 
平野地域自治区 大阪市平野区の区域 

このように各自治区の名称には、24区の名称を残すことを予定しています。 

特別区長と区議会議員

特別区の区長及び区議会議員は公職選挙法に基づく選挙によって選出されます。 

特別区名 淀川区 北区 中央区 天王寺区 合計 
議員定数 18人 23人 23人 19人 83人 

議員定数は現行の24区の区議会議員の人数を積み上げた数であり、議員報酬等は現行をベースにするとしています。 

出典:特別区設置協定書 

一般事務組合の業務

一般事務組合は「福祉部」「市民施設利用等部門」「情報システム管理部門」「総務・財産管理部門」に分かれており、福祉部では介護保険事業や福祉施設の管理、指導などこれからの高齢化社会において極めて重要な業務を担うことになります。 

また、市民施設利用等部門では住民利用施設の運営や斎場、動物管理センターの管理、また情報システム管理部門では住民情報系システムの事務もおこないます。 

さらに総務・財産管理部門では総務や財産管理も担うため、その業務量は東京23区のそれと比べかなり大きな負担になることが予想されます。 

東京都特別区よりも多くの業務が加わる

特別区の事務分担が東京都の特別区に比して、多くの業務が加わる根拠として示されているものは以下の3です。 

  1. 特別区の人口が約60〜70万人となり、中核市の要件を上回るため 
  1. 大阪市の知見、実績、ノウハウを活かせること、また大阪市の組織体制をもとに事務処理の体制が整備できる 
  1. 大阪市の施設、設備が継承されることや、財産調整制度により必要な財源が確保できる 

尚、東京の特別区が法律やこれに基づく政令で行っている業務以外の物については、条例による事務処理特例制度等の現行制度を活用して対応するとしています。 

大阪行政が示す特別区設置のメリット

大阪市を廃止分割し、特別区、地域自治区とその間をつなぐ一般事務組合によって、大阪の広域行政を一元化させることで大阪の潜在能力を発揮させたい考えを、大阪都構想を推進する大阪維新の会などは持っています。 

その都構想推進派が考える成長戦略を簡潔にまとめると以下のようなフローとなります。 

  1. 二重行政の解消 
  1. 大阪の成長 
  1. 税収の確保 
  1. 行政サービスの拡充 

都構想推進派が考える二重行政の解消とは、狭い地域にある図書館や学校などの維持管理費など、無駄にコストを生んでいるものを廃止したり統合することができる状態を指します。

2.の大阪の成長は、こうした無駄をなくして大阪市を廃止し大阪都(大阪府)として都市の統治機構を一元化させることです。

3.の税収の確保は現状大阪府に比べ大阪市の方が上回っており、従前の大阪市の税収が大阪府を支えることになるという考えです。

4.の行政サービスの向上は、今まで大阪府と大阪市で別々に行っていた都市計画などの行政判断を一元化し、4つの特別区をおくことで課題解決のスピードアップが期待できると見ています。

しかし、思惑通りに行くかは微妙なところです。二重行政はすでに解消されていると松井市長が明らかにしたり、都構想の実現で二重行政が解消してもその金額は数十億円と少ないのが実情です。

大阪住民だけでなく多くの有識者や国民の間でも意見は分かれており、特に大阪府内の住民の間では苛烈な議論が現在も行われています。 

古き良き大阪の地名

大阪の街はその歴史も古く、地域の自然や地形、また難波津に来航した外国船に由来した地名も多く残っています。 

今回仮に大阪都構想が可決されたとしても、こうした大阪の歴史を物語る名称がなくなることはありませんが、合理化や効率化を進める中でいつの日か合併などによって消えてしまうことは否定できません。 

都市開発はこうした無形の歴史的財産にも目を向ける必要があるでしょう。 

まとめ 

大阪都構想が可決され大阪市が廃止されてしまったのちに、大阪市の名称を戻したい、または大阪都になったあとに大阪府に戻したいとしても、それは絶望的に難しいことになります。 

これから大阪の住民に問われる大阪都構想は、こうした大阪市を廃止し大阪府の名をなくすことの是非も問われるという、歴史文化の面からも興味深い住民投票になったといえるでしょう。