住民投票とは?法的効力なし?事例を含め、わかりやすく解説。大阪都構想では2度目の住民投票が決定

2020.09.25
  • 大阪都構想案の住民投票は11月1日におこなわれる
  • 大阪都構想案の住民投票は大都市地域特別区設置法に基づきおこなわれる
  • 大阪都構想案の住民投票には法的拘束力はないが、住民の意思を無視して実施は難しい
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大阪都構想案が大阪府議会と大阪市議会で可決成立して、11月1日に住民投票がおこなわれます。しかし、大阪都構想案でなぜ住民投票がおこなわれるのかについては知らない方も多いようです。

大阪都構想では、特別行政区を設置することが前提となっており、その設置することの是非に対する住民投票になります。

この住民投票の設置根拠や法的拘束力について解説します。

大阪都構想案が成立し、11月に2度目の住民投票へ

新しい大阪都構想案は6月19日に特別区設置協議会(法定協)で承認され、総務大臣から無条件で承認されたことから、8月28日大阪府議会、9月3日大阪市議会で成立しました。

その結果、大阪都構想案は11月1日に2度目の住民投票がおこなわれることになっています。ただ、この11月におこなわれる住民投票がなぜおこなわれるのかについては知られていません。

住民投票には法的拘束力はないが、反対が多ければ強行は難しい

大阪都構想案においては、大阪市の廃止とそこに特別行政区が設置されることが前提になっており、大都市地域特別区設置法に基づき住民投票がおこなわれます。

しかし、実際には大都市地域特別区設置法における住民投票には、条例案などでおこなわれる住民投票と同様に法的な拘束力はなく、法律上は反対が多くても大阪府議会と大阪市議会で成立していますので、大阪都構想を実施に移すことは可能です。

それにもかかわらず、なぜ住民投票がおこなわれるのかについて見てみることにします。

住民投票とは?

通常、住民投票は地域の条例に基づいておこなわれるケースが多くあります。例えば、最近の例としては平成年12月15日に埼玉県北本市で市長提案による「新駅建設について」の住民投票がおこなわれています。

このように条例に基づく場合には、今回の大阪都構想案と同様に法的拘束力はありませんが、住民の意思を確認する意味でおこなわれるのです。

ただ、住民投票は条例に基づく場合だけではありません。

住民投票が必要になる法律

我が国では、住民投票がおこなわれる根拠は次のように5つの法律があります。

  • 日本国憲法による住民投票
  • 地方自治法に基づく住民投票
  • 合併特例法による住民投票
  • 地方自治体の条例による住民投票
  • 大都市地域特別区設置法

日本国憲法は国の根幹となる法律であり、ここに定められた住民投票(国民投票)は当然国にとって重要な事項に対しておこなわれるものです。憲法そのものの変更も国会で2/3以上の賛成で成立した上で国民投票にかけられます。この国民投票で賛成が過半数なければ、憲法の改正はできないのです。

地方自治法も、合併特例法は国会で成立した法律です。大都市地域特別区設置法も国会で成立しています。

しかし、地方自治体の条例による住民投票はあくまでも各地方自治体で制定された条例に基づくもので、国会で法律として成立しているものではなく、拘束力は弱くなっています。

このように、住民投票は住民の意思を確認するためにおこなわれますが、おこなわれる根拠となる法律でも、それぞれに投票結果の法的拘束力には差があるのです。

住民投票には法的拘束力がある場合と無い場合がある

住民投票に関する法的根拠でも、前述のようにその投票結果に法的拘束力のあるものとないものがあります。

すなわち、法的拘束力については、上記の法的根拠別でみると次のようになっているのです。

◎法的拘束力のあるもの

  • 日本国憲法による住民投票
  • 地方自治法に基づく住民投票
  • 合併特例法による住民投票
  • 大都市地域特別区設置法

◎法的拘束力のないもの 

  • 地方自治体の条例による住民投票

地方自治法には、条例制定のために住民は、直接請求ができる(有権者の1/50以上の有効署名が必要)ことになっています。しかし、選挙で選ばれた地方自治体の議会で成立している場合には、基本的には条例に基づいた住民投票で反対が多くても議会に優先権があり、実施は可能になっているのです。

ただし、反対が多い場合、住民の意思に反して実施することは難しいといわざるを得ません。

例えば、有名なものとして徳島県徳島市で平成12年1月におこなわれた「吉野川可動堰建設計画について」の住民投票では90%以上の反対があり、結局法的拘束力ないものの、反対が圧倒的に多かったために計画は白紙・凍結となっています。

このように、法的拘束力はないものの、反対が多い場合には実行が見送られることも多いといえます。

大阪都構想案は大都市地域特別区設置法によりおこなわれる

大阪都構想案は、政令指定都市などや都構想などの実現の際に、住民の意思確認の意味で大都市地域特別区設置法に基づきおこなわれます。

この大都市地域特別区設置法による住民投票では法定拘束力があります。

そのため、前回2015年5月におこなわれた住民投票では反対がわずかに多かったため、当時の大阪市長の橋下氏と大阪府知事の松井氏は実施を断念せざるを得ませんでした。

大阪都構想案ではなぜ住民投票をおこなうのか

大都市地域特別区設置法は、2012年に当時大阪府知事であった橋下徹氏の要請もあり、設けられた法律で、最終的に法的拘束力のある住民投票を経て決定されます。

2015年の大阪都構想案が初めてのケース

この大都市地域特別区設置法は、もともと大阪都構想案が浮上してきたことから成立した法律で、当然2015年の大阪都構想案が初めての住民投票の実施となっています。

前回の場合は、初めての大阪都構想案ということで市民への説明会は28回実施されていますが、今回は新型コロナウイルス禍のなかでの実施になり、2回目ということもあって住民説明会は8回と少なくなっています。

大都市地域特別区設置法における住民投票には法的拘束力がある

もともと大都市地域特別区設置法は、これまで都構想や道州制などが話題になり、大阪都構想が現実のものとして上がってきたために、法律としてまとめられたものです。

もともと大阪都構想などでは大阪市、大阪府などの関係者が集まった特別区設置協議会(法定協)で可決され、さらに大阪府、大阪市のそれぞれの議会でも成立しています。さらに総務大臣の承認も必要です。

それでも、自分たちが住む自治体がなくなるかもしれない時に、意思を示せないのはおかしいというのもあり、法的拘束力のある住民投票が行われます。

大阪都構想案の実施手順

大阪都構想案の実施手順としては、大都市地域特別区設置法に基づき、次のような過程が必要になっています。

  • 特別区設置協議会(法定協)における協定書の作成
  • 関係府市の議会の承認
  • 関係府市の住民投票での賛成
  • 総務大臣の設置に対する了承

このように、住民投票までに法定協や各関係議会の都構想案に対する採決がおこなわれ、成立してからおこなわれます。

また、実際には④の総務大臣の了承は①の法定協で成立した段階でおこなわれています。したがって、住民投票で賛成が多かった場合にはそのまま実施(2025年1月1日)に向けて動き出すのです。

前回の大阪都構想案の場合も事前に総務大臣の了承はとった上でおこなわれていましたが、実際の住民投票で反対が上回ったため、実施は断念していました。

大阪都構想では特別区の設置が伴うため、住民投票が必要

大阪都構想案は、大阪市を廃止して特別行政区を設置するため、大都市地域特別区設置法の適用を受けることになります。

大都市などで都構想を実現するには、東京都のように特別行政区を設置して、それぞれの特別区ごとに選挙による区長を選ぶ必要があり、そのため、必ず住民投票は必要になります。

ただし、九州などでいわれている道州制への移行の際には特別区にするか、北海道のようにすべて市のままにするかで適用は違ってくることになるといえるでしょう。

大阪都構想案における住民投票は11月1日に決まる

8月28日に大阪府議会、9月3日に大阪市議会で大阪都構想案は成立し、大都市地域特別区設置法に基づく住民投票は、10月12日告示で、11月1日投開票がおこなわれることに決まりました。

新型コロナウイルスの状況、気温低下でインフルエンザなどとともに第3波がきたり、総選挙などがおこなわれたりする場合には日程が動く可能性も示唆されましたが、総選挙の可能性がなくなるなど、11月1日投開票でほぼ確定しています。

前回の住民投票の結果

前回の大阪都構想案の住民投票は2015年5月15日におこなわれましたが、賛成49.62%反対50.38%という僅差で反対が多く、大阪維新の会は実施を断念しています。

今回の事前の世論調査では新型コロナウイルスに対する吉村知事の政策が人気を呼んで、賛成が多くなっていますが、前回も下馬評では賛成多数であったことから予断は許されません。

住民投票には法的拘束力があるために実施は断念された

前回の大阪都構想の住民投票では、反対と賛成の差はわずか1%未満でしたが、大阪維新の会の橋下市長と松井知事は実施を断念しています。

法的拘束力のある住民投票において否決に終わったため、当時の松井府知事、橋下市長もそれに抗う事ができず、大阪都構想は断念することになったのです。

大阪都構想案では4つの特別行政区が設置

今回の大阪都構想案では、特別行政区の設置は4つになっています。前回の特別行政区の設置とどう違うのかを見ておきましょう。

前回の大阪都構想案では5つの特別行政区だったが

前回の大阪都構想案では、特別区設置協議会(法定協)段階では7つの区割り案と5つの区割り案で論争がおこなわれた結果、最終的には5つの特別行政区への移行で可決し、住民投票にかけられました。

本来、区割り数が少なければ少ないほどコストはかからないといえます。そのために、今回の大阪都構想案では4つの特別行政区の設置と前回よりも1つ少なくなり、周辺市の組み込みは選択制になっており、それが評価されて公明党は賛成に回っているのです。

大阪都構想案における区割り案

今回の大阪都構想案では区割り案は4つの特別行政区となっています。区割りが少なくなれば、それだけ大阪市民の方の窓口は少なくなり、行政サービスは低下することになります。

しかし、区割りが少なくなるということは管理コストが少なくて済むことになり、この行政サービスの低下と行政コストの削減のどちらが住民投票で評価されるかになるのです。

争点がなくなり、よりコスト削減効果の高い区割りに

前回の大阪都構想案では、大阪市と大阪府の大きな財政赤字が存在し、区割り案だけでなく、不採算事業の民営化などの赤字削減策も評価の対象になっていました。

しかし、前回から今回の大阪都構想案の間に、大阪地下鉄・バス事業などの不採算事業はほとんどが民営化や売却されており、財政赤字の解消策は必要なくなっています。そのため、よりコスト削減効果の大きい4つの特別行政区の設置が選択され、住民投票における唯一の争点となっているのです。

いずれにしても、大阪の住民の方の意思表示がどちらになるかで、大阪都構想が実現するかどうかが決まります。

よく考えて投票をおこなってください。

大阪都構想案の住民投票のまとめ

大阪都構想案が大阪府議会と大阪市議会で可決成立して、11月1日に2回目の住民投票が行われることになりました。

住民投票は大都市地域特別区設置法に基づき実施されて、法的拘束力があります。前回の住民投票では反対がわずかの差で上回ったことから、大阪維新の会は実施を断念しています。