大都市制度とは?メリット、課題、問題点は?大阪都構想による特別区設置では何が変わる?

2020.09.26
  • 大都市制度の概要やメリット・デメリット
  • 従来の大都市制度には限界も…?
  • 大阪都構想による大都市制度の新たなモデルケースに注目
この記事は12分で読めます

橋下徹元大阪府知事が中心となって提唱された大阪都構想がきっかけとなり、大都市制度に関して注目が集まりました。

東京はもちろんのこと大阪・京都・横浜など大都市と呼ばれる都市は日本にいくつかありますが、なぜこういった制度が取られているのでしょうか。

そこで今回は大都市制度のメリット、課題、問題点、そして大阪都構想による特別区が設置されることで一体何が変わるのかについて解説していきます。

大都市制度とは?

大都市制度とはそもそも一体どのような制度なのでしょうか。

実は日本においては大都市制度という規定は憲法には含まれておらず、地方自治法において定められています。

地方自治法における「大都市に関する特例」と「特別区」に関する規定に基づき一定の都市を大都市と呼んでいるのです。よく聞く政令指定都市も大都市制度の一部になります。

なぜ大都市制度が採用されているのか?

日本国では都道府県と市町村という形で、地方自治の区分を定めています

都道府県の中には、大阪府や横浜市などの人口が非常に多い都市から、過疎化が進む地方まで様々なところがあるのは簡単に想像がつくのではないでしょうか。

特に人口が多い都市では規模が小さい都市と比べても、大都市特有の行政上の問題が発生します。

そのため一定の規模を超えた都市が問題を解決しやすいように、特別な権能や仕組みを定めておりこの仕組みを大都市制度というのです。

そしてこの大都市制度では大まかに分けて「都区制度」と「政令指定都市制度」の2つの大都市制度を採用しています。

都区制度

東京都は他の道府県と比べても、人口が集中しており経済活動や生活が盛んに行われている場所です。人口が一極集中しているので、都道府県・市町村という大雑把な区分けでは事務の配分が非常に難しいものになります。

そのため東京都では「特別区」を定めることで、上下水道や消防といった都が統一的かつ画一的に処理しなければいけないものを除いて、他の地域では市町村が処理する事務を区が処理することを可能にしているのです。

通常市町村という仕組みで事足りるのですが、東京は人や経済の規模が大きいため、区という形で細かに分けてそれぞれに事務を分配することで、東京都という大都市行政の統一性・画一性を確保することを実現しています。

政令指定都市

政令指定都市は東京以外の、大阪や京都、横浜など人口が密集している大規模の都市のことで、人口50万以上の市がこれにあたります。

政令指定都市も東京都と比べると人口は少ないですが、規模は大きい都市です。

そのため政令指定都市になると福祉・衛生・都市計画事業などの事務の権限が移譲されることに加えて、知事だけではなく、大臣の監督を受けることができる権利や、区を設置できる権利が認められます。

大都市制度のメリット

ニュースでも政令指定都市を目指して、市町村が合併を繰り返しているということを耳にする機会もあるとは思いますが、なぜ政令指定都市を目指す必要があるのでしょうか。

それは大都市制度のメリットと大きく関わってくるのです。そこで大都市制度のメリットについて以下で詳しく解説します。

財源が増える

政令指定都市になると、県から市や区に財源の一部がうつされます。

財源がうつされることで市や区の財税収が増えるので、自由に使うことのできるお金が増え、より住民の暮らしに必要なところにお金を使うことができるようになるのです。

新たに増えた税収によって、区画整備や都市の計画的な開発、道路交通整備などにお金を使うこともできます。

権限が増える

政令指定都市になると、権限が県から移譲されて、今までは県が行なっていた教職員の採用や人事異動をすることができるようになります。

また市が独自で教育委員会を通して、教員の指導力向上のための研修や研究などを行えるようにもなるので、よりその地域の独自色を出すことが可能になるでしょう。

つまり政令指定都市になることで、市とその地域の結びつきを強めることが可能になるので、より地域の特色を生かした街づくりが出来るようになります。

行政の利便性の向上

加えて政令指定都市になると、人口も多いので行政機関での手続きができるようになる窓口を増やすことができたり、区役所で手続きを行うことができるというメリットもあります。

例えば、比較的大きい市でありながら政令指定都市でないと、わざわざ市役所に手続きの申請をしにいく必要があるでしょうし、区ができることで、今までは市がカバーしていた広大な範囲を区で細かく区切ることが可能になります。

そのためより行政サービスの利便性が向上するというわけです。

大都市制度のデメリット

大都市制度にはデメリットも存在します。それは少子高齢化・人口減少による影響です。

現在は人口が多い地域を大都市制度を採用することで、行政運営を画一的・統一的に行おうと試みています。

しかし日本は少子高齢化によって少しずつ人口が減少している国です。そのため少しずつですが、国全体での税収も下がっていくことが予想されます。

税収が減少することで、市や区の運営が行き届かなくなり地域のインフラの老朽化などが起こることが予測され、最終的は仕組みそのものが破綻しかねないリスクを抱えているといっていいでしょう。

大都市制度の課題・問題点

大都市の運営を円滑に行うために採用されたのが、大都市制度です。しかしそれが必ずしも全ての都市に当てはまるというわけではありません。

現在では大都市制度は様々な課題を抱えているのです。そこで以下で、考えうる代表的な課題について紹介していきます。

様々な都市があるのにも関わらず画一的な制度

一口に大都市といっても、そこには様々な種類の都市があります。

例えば東京などは経済の中心であり、人の活動を行う中心地としての役割を有していますが、その一方で埼玉や千葉などはいわゆるベットタウンとも呼ばれることがあるでしょう。

ベットタウンと経済の中心では、果たす役割も違うのであれば抱えている課題も大きく異なります。

同様に例えば、大都市である新潟などは確かに人口は多いかもしれませんが、急速に高齢化も進んでおり、今後介護や医療における問題が主要なものとなってくるでしょう。

こういった都市によって抱える課題・役割・人口などが、全く違うにも関わらず単純に大都市として括っているのは大きな問題です。

そこで現在では、よりそれぞれの都市の実情に合わせた行政の組織を構築し、経済や行政機能の活性化が望めるような改革を進めなければいけないといわれています。

二重行政の発生

市や区に権限を一部譲渡して様々な業務を行わせることは、業務の迅速化にも繋がり、大きな業務だけ道府県が行えばいいようにも見えますが、ここにも課題が存在します。

それは二重行政です。

政令指定都市として権限が増えた地域は、教育や医療福祉などに独自の権限を持つようになります。一方で道府県もこういった業務は行なっているので、どこからどこまでを、どちらがやるのかあいまいになってしまう状態になることが考えられます。

横浜などの大規模な都市では、その状態が顕著であり管轄が入り混じっている状態が長く続いており、その結果行政サービスが遅滞するということが起こりえます。

大阪から始まった大都市制度の課題を解決する改革運動

ここまで大都市制度の概要、メリット・デメリットや課題点などについて解説してきました。

上記で紹介してきた大都市が抱える課題や問題点は今までも常に議論されてきましたが、結局有効な解決策を見つけることなくずるずる現在に至ります。

もっともそうした大都市制度の抱える問題を解決しようと動き出した人がいました。元大阪府知事の橋下徹さんです。

橋下さんは大阪府知事・大阪市長のどちらも経験しましたが、その経験の中で大阪という大都市が抱える大きな課題に向き合うこととなりました。

府市どちらも不幸になる意地の張り合い

以前の大阪府と大阪市の関係性は芳しくなく、険悪な状況が続いていました。

大阪府と大阪市の意地の張り合いで、それぞれが開発にのめり込み、無駄なビルの建設に税金が注ぎ込まれたり、管轄の主張を両者が主張することで異様な交通インフラなどの問題が生じており、橋下徹さんに「政策の失敗」と一刀両断されます。

橋下徹さんはこれらを「大都市制度の弊害」と感じており、大きな改革を打ち出すことになります。

それが「大阪都構想」です。

大阪都構想とは?

大阪都構想とは、今までは大阪府と大阪市に分かれていた行政組織を、東京都と同じように特別区を導入することで統一・画一した組織にしようという構想になります。

現在東京都では、東京都全体に関わるような広域的行政活動に関しては都の業務、身近な行政サービスなどは特別区の業務と、業務によって最適な担当ができるような仕組みになっており、役割分担が適切に行われている状況です。

これを大阪にも導入することで、行政サービスを大阪府と大阪市で分担しようという狙いがあります。

都構想による特別区設置で大きく変化する大阪という都市

大阪都構想によって特別区を設置することで、大阪は大きな変化が起こると、大阪維新の会など都構想賛成派は主張しています。

ここでは都構想賛成派が主張する、特別区設置で起こりうるだろう大阪の変化について解説していきます。

行政効率化

現在の大阪は二重行政によって無駄な行政活動と税金の使用がされていると、大阪維新の会などはアピールします。

特別区を設置することで、今まで時間がかかっていた行政サービスを区に割り振ることが可能になり行政活動が効率化すると、都構想推進派は解説します。

ただし、松井市長は大阪市議会の本会議で、吉村知事との人間関係で、二重行政は解消していると発言しています。連携がはかられているのであれば、わざわざ大阪市廃止・特別区設置をする必要があるのか問われても仕方ありません。

経済への好影響

大阪都構想によって無駄を省いた経済効果は、1兆1,511億円ともいわれています。

しかし、二重行政の解消に関する経済効果は数十億円で、特別区設置で大阪市を分割化することで得られる経済効果の計算の根拠が薄く、1兆円の経済効果はオーバーではないかという指摘が専門家から出ています。

まとめ 大都市制度は利点だけではない!大阪都構想の今後に注目!

今回は大都市制度について解説してきました。大都市制度は行政の質や資金面まで改善する素晴らしい制度ですが、一方で二重行政の問題などもあり、一概にメリットだけとはいえません。

今までうまくいってきた制度ではありますが、今後の日本の状況によって制度も柔軟に変更していくべきでしょう。

それに目をつけた形で大阪都構想が生まれ、住民投票で民意が問われようとしています。期待されるようなことが起こるかは未知数であり、徹底した議論が求められます。