大阪都構想で行政サービスが削減されるのか?都構想の危険性、罠とは?本当の目的を詳しく解説。

2020.09.26
  • 大阪維新の会は、都構想が実現し特別区になっても行政サービスは削減されないとする
  • 反対派は都構想が実現すれば、大阪市の権限や財源が大阪府に吸収されると主張
  • 反対派は、大阪都構想の本当の目的は、大阪市の財源を大阪府が召し上げることにあると考えている
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大阪都構想が実現することで、大阪市は廃止されます。

これにより、大阪市が行っていた行政サービスは新設される4つの特別区に移行します。大阪維新の会はこれにより、行政改革が進むと主張しますが、反対派は逆の現象が起きると考えています。

反対派が主張する大阪都構想の危険性や罠とは言ったどういうことなのでしょうか?大阪都構想の本当の目的とは何なのでしょうか?大阪維新の会と反対派の主張を比較します。

大阪維新の会が主張する大阪都構想の目的

地域政党「大阪維新の会」は大阪都構想を党の主張として掲げてきました。大阪都構想の目的は、大きく分けて3つあります。

二重行政の解消

大阪維新の会は、広域行政体である大阪市と、広域行政が可能な政令指定都市である大阪市が同じような行政サービスを担うことで対立し、非効率な税金の投入を繰り返したと主張しました。

大阪維新の会はこの状況を「府市あわせ(不幸せ)」とよび、その解消のためには大阪市をなくして広域行政を大阪府に一本化する必要があると主張したのです。大阪都構想を実現し、行政の無駄をなくすることが大阪都構想の目的とされたのです。

住民サービスの拡充

大阪維新の会は、人口270万人を抱える大阪市の行政決定を市長一人が担うのは無理があると考えます。大阪市の人口は京都府全体の人口である260万人を超えており、一自治体としては大きすぎるというのです。

都構想によって生まれる4つの特別区は人口が60万人から75万人とほぼ均等になるように区分されます。分割されることで意思決定を速め、住民サービスを向上させるべきだというのが大阪維新の会の考えといえるでしょう。

大阪都構想による経済効果

大阪維新の会は大阪都構想を実現することで、行政コストを大幅に削減できると考えています。大阪都構想の実現によって削減される歳出を1兆1,409億円と見積もりました。

ここで浮かせた財源のうち、5000億円を産業振興などに振り向けることで1兆1,511億円の経済波及効果があるとします。さらに、大阪府が広域事業を一本化して担当することで意思疎通がスムーズになり、鉄道やインフラの整備が加速できるとも主張しました。

新設される4つの特別区とこれらが担う行政サービスとは?

現在、大阪市は住民に身近な事務と、病院や港湾、高等学校などの広域行政の両方を担っています。このうち、新たに作られる4つの特別区が担当するのは住民に身近な事務です。

新設される4つの特別区の概要

4つの特別区のうち、最も人口が多いのは現在の大阪市役所を含む北区です。人口が75万人で、区内の総生産額は5兆7704億円となります。次に人口が多いのが中央区で71万人です。総生産額は4区の中で最も多い8兆2791億円となります。

3番目の人口となるのは天王寺区です。人口は64万人で総生産額は4区中最小の1兆812億円となります。最も人口が少ないのは淀川区で人口は60万人、総生産額は2兆2341億円です。

4つの特別区が担う行政サービス

4つの特別区が担う具体的な住民サービスは、戸籍や住民基本台帳の管理、幼稚園・小学校・中学校の運営、生活保護制度の運用、保健所などの衛生業務、地域の防災活動や街づくりなどです。

大阪都構想では、大阪府と大阪市が役割を分担することで、4つの特別区は市民にとって身近な業務に専念することになります。

特別区になると行政サービスが低下するとの意見

大阪維新の会は特別区の導入により行政サービスのスピードが向上し効率が良くなると主張します。それに対し、自民党や多くの専門家は大阪都構想に反対を表明しました。都構想は効率化とは逆に行政サービスが低下すると主張したのです。今度は、こちらの意見を見てみましょう。

特別区を導入すると予算が減少し、サービスが低下する

現在、大阪市が行政サービスに使用している予算はおよそ8600億円です。これらのうち、広域業務とみなされ大阪府に移管される予算が2000億円程度あります。それらを差し引くと、4つの特別区には6600億円の予算しか残りません。

これまで、大阪市が自由に使い道を決めることができた2000億円は大阪府の管轄に移ることで大阪市民が享受できるサービスが低下すると主張しました。

有識者による行政サービス低下の指摘

2015年の住民投票の前、多くの有識者が大阪都構想に対し反対を表明しました。彼らが問題視したのは、大阪市が現在持っている基金などの財源や国が自治体に交付する地方交付税の一部などが大阪府に「召し上げられる」という点です。

立命館大学の森裕之教授は、2015年に大阪市内で行った講演の中で、財源が府に移行することで市の独自性が損なわれ、市民サービスが低下すると主張しました。

大阪都構想では府に決定権が移る財源が23%ですが、同様の制度を取る東京都では特別区の収入の45%を都が吸い上げていることを指摘しています。

東京の都区制度を批判した『都構想の罠』とは?

京都大学大学院教授の藤井聡は、大阪都構想に対する反対論者としてよく知られています。彼が「現代ビジネス」に寄稿した「大阪都構想は、マジで洒落にならん話(1) ~賛成する学者なんて誰もいない編~」で『都構想の罠』という書籍について触れています。

この書籍は、都区政の専門誌『都政新報』に連載された記事に加筆修正して出版されたものです。記者たちは都構想がすべてを解決する万能薬ではなく、大阪は東京を反面教師として都構想導入に慎重になるべきだと主張しています。

大阪都構想が持つ危険性とは?

藤井聡教授は、2020年10月4日に「大阪市「廃止」は、如何に「危ない」のか? 住民投票における理性的な有権者判断の支援を目指して」と題する講演会の開催を告知しました。どうして、大阪都構想は危険だとされるのでしょうか。

大阪都構想はイメージが先行し、中身が知られていない

藤井教授は大阪都構想について、イメージばかりが先行し、大阪市民が内容を詳しく把握していないのではないかと危惧しています。大阪よりも発展している東京の仕組みをまねることで大阪が発展すると安易に考えるべきではないというのです。

藤井教授は、大阪都構想の本質を大阪市の廃止であると考えています。大阪市という自治体をつぶし、大阪市の財源や権限を大阪府に吸収合併したうえで、権限の小さい特別区を4つ作る大阪都構想は、市民サービスの低下を招くと考えています。

大阪の教育や文化、伝統が衰退する

大阪大学の小野田正利教授は、大阪市が廃止されることで大阪市の教育が劣化すると主張します。その理由は、大阪市独自の教員採用ができなくなるからです。

教員採用試験は、文部科学省の管轄のもと、各都道府県と政令指定都市が実施することができます。そのため、大阪市が政令指定都市でなくなれば、当然、教員採用試験も独自で行うことができないというわけです。

また、関西学院の奥野卓司教授は、大阪都構想が実現し大阪市から文教政策の主導権がなくなることで、図書館や博物館、文楽などの上方固有の文化を破壊してしまう危険性を指摘しています。

大阪市が政令指定都市でなくなることで、できなくなることはあるか?

大阪市が大阪府と並ぶ権限を持つことができるのは、大阪市が政令指定都市だからです。大阪市が政令指定都市でなくなることで、どのようにかわるのでしょうか。

政令指定都市とは何か

2020年現在、日本には20の政令指定都市が存在します。人口50万人以上の都市のうち、政令で指定された都市のことで、都道府県の持つ権限の多くを委譲されます。

そのため、政令指定都市の権限は都道府県並みとなることがあります。政令指定都市は都道府県を通さず直接国と交渉する権限があり、都市独自の政策を実施しやすいというメリットがあります。

移譲される権限は、児童福祉・生活保護・社会福祉事業・介護保険・自立支援・食品衛生・医療・区画整理など全部で13項目が規定されています。

・大阪市が政令指定都市から外れることでできなくなることとは

まず、国との直接交渉ができず、全て大阪府を通すことになります。次に、新設される4つの特別区は大阪市に比べると財源や権限が大幅に縮小された存在であり、これまでのような独自政策を実行しにくくなることです。先に述べた教員採用の問題などがわかりやすい例でしょう。

4つの特別区に再編することで、余計な経費がかかるとはどういうこと?

大阪都構想反対派は、大阪都構想は経費削減どころか新たに無駄な出費をしてしまうと主張します。一体どういうことなのでしょうか。

まず、特別区を導入するために庁舎の改修や新庁舎の建設が必要となるため、464億円が必要だと指摘しました。これは、大阪市を存続させ行政区の区割りを変更する総合区で必要とされる74億円をはるかに上回る金額です。

また、議会の試算でも大阪市の試算でも特別区の導入で公務員が増加することが見込まれています。そのため、増加分の人件費が必要となるというのです。つまり、経費を節減できるはずの大阪都構想はかえって経費を増大させ大阪の財政を圧迫すると主張したのです。

地方自治ができなくなるというのはどういうこと?

大阪都構想が実現すると、大阪の地方自治が失われるという声があります。一体どういうことなのでしょうか。

第二次世界大戦後、国が全国各地を直接支配するのではなく、地域住民がその地方の政治を決める意志を持つと考えられてきました。権限や財源についても国が一括で集めるのではなく、地域に移譲するべきだという考え方が強まりつつありました。これを地方分権といいます。

反対派は、大阪市の権限を縮小し、財源を大阪府に移す大阪都構想は住民が持つ自治の権利を狭め、地方自治をできなくさせると主張したのです。

これに対し、大阪維新の会は住民サービスに関する権限や財源は特別区に残されるため、地方自治ができないということはないと反論しました。

大阪都構想の本当の目的は大阪市の財源を大阪府が吸い上げることにある

2015年に否決されたにもかかわらず、再度、2020年に住民投票の運びとなった大阪都構想。大阪都構想の本当の目的は何なのでしょうか?

都構想の本当の目的は、大阪市が持っている財源を大阪府が吸い上げることにあるといいます。大阪府の債務である府債残高は平成20年から平成27年までの間に4461億円増加しました。その一方、大阪市債は7555億円減少しています。

大阪都構想の反対派は、大阪都構想は大阪市の財源を大阪府がとりあげることが本当の目的であり、都構想が実現した場合、大阪市民はサービスを削減され損をすると主張するわけです。

まとめ

大阪維新の会は都構想が実現し、行政サービスが4つの特別区に移ることで行政サービスがより身近になり、経費の無駄を削減できると考えています。

しかし、反対派は、大阪都構想がイメージ先行であり、府民は十分にわかっていないと主張しました。さらに、大阪市が政令指定都市から外れることで、従来持っていた権限や財政が縮小され、行政サービスが低下すると考えます。

そして、大阪都構想の真の目的は大阪市民の行政サービス向上ではなく、大阪市が持つ財源を大阪府が召し上げることにあると主張したのです。

行政サービスについて、賛成・反対両派の主張は真っ向から対立しています。その是非を判断できるのは大阪市に現在住む大阪市民だけでしょう。今後の動向を注視する必要があります。