大阪都構想により隣接市はどうなる?住民投票無しで特別区に変わる?大阪市だけの問題ではない?

2020.09.27
  • 大阪都構想が実現した場合隣接する10市で特別区への再編が可能に
  • その場合住民投票の必要なはく議会の承認だけで特別区への再編が可能
  • ただし、住民の理解が得られない可能性が高く都構想の現実=隣接市の再編とはならない可能性が高い
この記事は13分で読めます

大阪都構想の住民投票が11月1日に迫って来ています。これが可決された場合、大阪市は4つの特別区に再編されます。 

しかし、この制度大阪市だけの問題ではありません。実は隣接市にも特別区再編に向けて動きがあるかもしれません。 

なぜ、大阪市以外の隣接市にも特別区再編の影響があるのでしょうか。この記事では隣接市に対する影響を分かりやすく解説していきます。 

特別区に隣接した市は特別区への再編が可能

大阪都構想を法的に支持する「大都市地域特別設置法」では、大阪都構想が実現した場合、隣接市も特別区に再編することが可能です。 

住民投票は必要なく議会承認のみで再編可能

その再編に関するハードルは都構想の実現よりハードルが低く設定されています。その最大の要因は住民投票がいらないという点にあります。 

大阪都構想の成立に向けては府議会・市議会の承認の後、住民投票で賛成多数であれば、制度が実現に向けて動き出します。 

しかし、隣接市の特別区再編に関しては府議会・市議会の承認のみで制度が実現することが可能です。 また、制度設計上は、議会の承認を経ずとも、議会閉会中に市長の専決処分を行えば市を廃止し特別区へ移行することが可能です。

これは、大阪都構想が1つの市を4つの特別区に分割するのに対して、隣接市の場合はその市がそのまま特別区となるので住民投票がいらない決定プロセスとなっています。 

対象は府内10市

もし、仮に大阪都構想が実現した場合隣接市は堺市、豊中市、吹田市、摂津市、守口市、門真市、大東市、東大阪市、八尾市、松原市の府内10市の特別区再編が可能になります。 

大阪都構想が現実した場合はこれらの市がどのような動きを見せるのかに注目が集まっています。 

なぜ、大阪都構想の実現の先にこれらの市の動きが注目されるのでしょうか。 

詳しく解説していきます。 

なぜ、隣接市の動向が注目されるのか

隣接市の動向が注目されるのでしょうか。それは大阪都構想の初期構想まで戻ると見えてきます。 

初期の大阪都構想では堺市も再編の対象だった

大阪を含む関西圏自治体の再編という課題は昭和の時代から議論されてきた課題です。東京に次ぐ第2の都市としてどういう自治のあり方が良いのかが話し合われてきました。 

現在議論されている大阪都構想は2008年に大阪府知事に就任した橋下氏が2010年から提唱してきた制度がベースとなっています。 

この2010年に提唱された大阪都構想では「大阪府全域を「大阪都」とし、大阪市・堺市の政令指定都市を解消させ大阪府と一体化させるというもの(Wikipediaより引用)」でした。 

つまり、現在の案の大阪市の再編だけではなく、隣接市である堺市も再編の対象になっていたのです。 

堺市長選挙での敗北を受けて撤回

初期大阪都構想の議論が進む中2013年に堺市の市長選が行われました。当時橋下氏は大阪府知事を任期途中で辞任し、都構想の実現のために大阪市長選挙に出馬し見事当選、大阪市長として働いていました。 

つまり、大阪都構想に関して大阪市は進められる体制になっており、堺市も大阪都構想を推進する人物が市長になればいよいよ都構想の実現が見えてくるという時期でした。 

しかし、この堺市長選挙で大阪維新の会の候補者は大阪都構想に反対する現職の市長に負けてしまいます。 

堺市の住民は選挙で大阪都構想にノーを提示したことになります。 

この選挙での敗退をきっかけに大阪都構想から堺市は外されるようになり、最終的に今の大阪市内を4つに分ける案になりました。 しかし、堺市では一昨年、推進派の市長が誕生したことによって、再び都構想入りが現実味を帯びてきています。

もともと、大阪都構想には隣接市の再編も含まれていたということが、今回の住民投票で都構想が可決された場合に隣接市がどう動くのかに注目が集まっている理由です。 

隣接市が特別区になる地域的メリット

では、なぜ大阪都構想の初期案には堺市の再編も含まれていたのでしょうか。 

1つは堺市が大阪市と同じ政令指定都市であったことがあります。 

政令指定都市ということで持っている権限がかなり高いことから大阪府との二重行政が問題視されていました。 堺市は、堺市には二重行政はありません、と議会で何度も答弁してきましたが、大阪府からすれば広域のまちづくりの権限が堺にあって大阪府にないことが問題でした。

それの解消のために大阪市、堺市2つの政令指定都市を1度に再編してしまおうという考えだったのです。 

しかし、それ以外にも隣接市を再編するメリットはあります。 

経済圏で1つにまとまり効率を上げる

隣接市が特別区になった場合のメリットとして行政効率の向上というのがあります。

大阪府というのは香川県に次いで全国で2番目に小さい都道府県です。なので、大阪府にとっては大阪市が特別区4つになったのに次いで隣接市も特別区になれば、府の権限で行う広域自治サービスが効率的にできるようになります。 

小さな府だからこそ、広域自治は府に一任して効率良くやってもらい、基礎自治サービスは特別区で個別の住民に合わせたサービスを提供しましょうという選択肢が取れるのです。 

道州制導入の議論もカギ

隣接市が特別区になる先には道州制の議論というものもあります。 

道州制とは現在の都道府県に代わる州を設定して、全国を分割し自治を行おうという自治体再編の考え方です。 

この考え方には複数の区分がありますが、大阪・京都・神戸などをまとめて関西州にして広域自治をまとめようという考え方もあります。 

もし、この道州制が導入されれば現在日本にある市区町村はすべて特別区と同じ扱いになるので、そのモデルケースとしても大阪市そして隣接市が特別区に再編されるかどうかは注目が集まっています。 

隣接市が特別区になる住民側のメリットは

ここまで隣接市が特別区になるメリットを大阪府全体の観点から解説してきました。 

では、実際に隣接市に住む住民にとって特別区への再編はどんなメリットがあるのでしょうか。詳しく解説してきます。 

より身近な基礎自治体へ

隣接市が特別区になるメリットとして住民にとって基礎自治サービスがより充実すると言うのがいわれています。 

特別区になることでこれまで市単位で行っていた広域自治サービスが府の役割になり、基礎自治サービスに注力できる可能性あることがその理由とされています。 

また、特別区の区長を選挙によって決められるのでより自分たちの意見を行政に反映しやすくなるというメリットも言われています。

大阪市が再編されるよりメリットは薄い

しかし、これらのメリットは大阪市が4つの特別区になる場合と比較すると効果はほとんどありません。

確かに、特別区の役割は基礎自治サービスのみになりますが、隣接市の場合は大阪市と違い政令指定都市の権限がないので、そこまで広域自治に関するサービスに力を使っていたわけではありません。 

なので、特別区になったとしても基礎自治サービスに使える力が飛躍的に大きくなるという訳ではありません。 

また、区長や区議会議員の選挙に関しても現状、市長や市議会議員を選挙で決めているのと何も変わりません。 

大阪市の場合は今まで市全体で1人の市長を決めていたのに対して、4人の特別区長を決めるので自分たちの意見を反映しやすくなりますが、隣接市に関しては特別区になったとしても選ぶ区長は変わらず1人なので、意見が通りやすくなるかというとそうではありません。 

隣接市が特別区になる住民側のデメリットは

隣接市が特別区になる場合、住民にデメリットはあるのでしょうか。 

こちらも詳しく解説していきましょう。 

税収が減ってしまう

隣接市が特別区になった場合これまで市の税収として市に入っていたお金の内一部が広域自治のため大阪府に入ることになります。 

これは大阪市が特別区になった場合も一緒の現象がおきるのですが、収めた税金が広域自治サービスとして自分たちの地域とあまり関係のない所に使われてしまうというデメリットがあります。 

再編の初期コストがかかる

こちらも大阪市の場合と同じように再編の初期コストがかかります。 

住所が変わることになるので、街の表示版の変更や役所のシステム改変など、特別区になることでかかってしまう初期コストは税金での負担になるので、これらの費用を負担してまで本当に特別区になる必要があるのかという議論もされています。 

メリットに関しては大阪市の場合よりも薄かったのですが、デメリットの場合は大阪市の場合と同等のデメリットがあると考えられています。 

隣接市が特別区になることで住民の生活はどう変わる

もし、仮に隣接市が特別区となった場合に住民の生活は具体的にどう変化するのでしょうか。 

交通網が良くなったり、働きやすくなったり

広域自治サービスを府が一括して行うことでこれまで市と市の間で連携や調整が必要だった行政事業が進む可能性があります。 

例えば、公共交通機関の整備や延伸などです。 

そこまで大きく変わらない可能性もある

ただ、隣接市の特別区への再編は議論されていない部分も多く、大阪府全体として見ればメリットはあっても地域住民の生活に直接還元されるようなメリットを提供できないのではないかという見方もあります。 

大阪市の再編は1つの市を4つの特別区に分割することで得られるメリットもあるのですが、1つの市を1つの特別区にすることで何か大きなメリットがあるかというと疑問符が付きます。 

大阪都構想が実現した場合の特別区再編の可能性

ここまで大阪都構想が実現し、隣接市が特別区に再編された場合のメリットやデメリットについて解説してきましたが、仮に大阪都構想が実現した場合、隣接市の特別区への再編の可能性はどれぐらいあるのでしょうか。 

住民理解が得られない可能性が高い

これまで解説してきた通り、隣接市の特別区再編のメリットは大阪市より薄く、デメリットは大阪市と同じぐらいあると考えられます。大阪市でさえ、住民の意見が別れている中で隣接市の住民がどこまで特別区になることに理解を示すのかは不透明な状況です。 

現状の制度のまま特別区になろうとした場合は地域住民の理解が得られず、反対の声が大きくなることが予想されます。 

都構想の実現=隣接市の再編ではない

大阪都構想反対派の意見の中では隣接市が特別区に再編されてしまうから反対という意見もあるようなのですが、実際、その恐れはおおきくあります。隣接市の市議会で可決されれば住民投票をせずとも組み込まれることが可能ですし、首長が専決処分によって議会にかけずに編入を認めることもありえます。 

まとめ

ここまで、大阪都構想と隣接市の特別区再編について解説してきました。 

隣接市の特別区再編については別の大きな政治課題として今後議論され、選挙で争われる争点になる可能性もあるので関心を持ってみていくことは大切ですね。 

この記事がその一助になれば幸いです。