大阪都構想による財政効果や経済効果とは?大阪市廃止によるメリットやデメリットも解説。

2020.09.26
  • 大阪都構想の肝は二重行政の解消
  • 政令指定都市と特別区について
  • 都構想による財政と経済への影響は?
この記事は16分で読めます

11月1日の投開票によりその是非が決まることになる都構想。 

投票権を持つ大阪市民にとっては、二重行政の解消とその効果、財政や経済に対する影響、住民の暮らしへの直接的な影響など、住民投票の争点は様々だと思います。 

ここでは、大阪都構想による財政効果や経済効果、大阪市を廃止し特別区で再編するメリットやデメリットなどを中心に解説していきます。 

大阪都構想の目的は二重行政の解消

大阪都構想の大きな目的は大阪の二重行政を解消することだと、大阪維新の会などの都構想推進派は主張します。 

ここでは最初に、二重行政は大阪にとってどのような影響を与えているのか、考えていきます。 

行政の役割 

都市の行政とは、基本的に「基礎自治体」「広域自治体」これら2つの大きな役割分担によって成り立っています。 

広域自治体は、交通インフラや観光、大学などを行政の大きな枠組みを担い、基礎自治体は小学校や区役所窓口、介護施設など地域レベルの行政を担います。 

県や府が広域自治体を、市町村が基礎自治体をそれぞれ担うと考えればわかりやすいです。 

「基礎自治体」「広域自治体」の2つを踏まえて考えた場合、大阪には政令指定都市である大阪市があることがポイントになります。 

二重行政の解消 

大阪市は全国に20ある政令指定都市のひとつですが、政令指定都市の大きな特徴は「基礎自治体」「広域自治体」これら2つの権限を両方持っていることです。 

また、政令指定都市は県や府から独立した独自の行政を行うことができ、つまり、広域行政の部分で仕事がかぶってしまうケースがあり、このケースが二重行政として現れる、そのように都構想推進派は考えています。

ただ、市議会本会議において、松井市長は、大阪府との二重行政は解消していることを明らかにしています。また、嘉悦大学の報告書では二重行政の解消によって得られる効果は数十億円しかなく、実はそこまで効果がない事実が見え隠れします。 

大阪市の廃止と特別区の設置 

政令指定都市の大阪市を廃止するということは、大阪全体の行政が大きく変わることを意味します。 

大阪市に都構想が必要な理由 

大阪以外にも全国には政令指定都市がありますが、大阪に都構想が必要な理由として、大阪の面積は全国都道府県の中で2番に小さい面積であることが挙げられます。 

大阪市は立地的にも大阪府の中心であり、また都市圏も市域を超えています。 

そのため、共に広域自治体を持つ大阪府と大阪市で二重行政、事務的に重なり合う部分が出てきても不思議ではありません。 

共に広域自治体を持つ府と市が上手く連携していれば広域行政における被りを避けることができます。 

このあたりは、大阪市民や大阪府民らが逐一、行政の監視を行えば指摘できる話でもあるため、今後二重行政が深刻化する可能性は低いことが予想されます。

特別区とは? 

特別区とは、特別地方公共団体のことをいい、日本においては東京都にある23区がそれになります。 

東京都以外にある身近な区は行政区といい、東京都23区である特別区とは意味合いが異なります。 

違いとしては、地方における行政区の区長は市長が選任し、特別区の区長は選挙によって選ばれることで、区長が選挙で選ばれる分、特別区の方が基礎自治体における民意が反映されやすいとされています。 

4つの特別区で再編 

大阪都構想とは、今ある大阪市を廃止して新たに4つの特別区で再編する制度のことをいいます。 

大阪都構想の区割り 

大阪市には現在24の区があり、都構想移行後はこれを4つの区にまとめることになります。 

区名は、「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」と予定されており、各特別区に大阪市役所に代わる4つの特別区役所が置かれることになります。 

新たに庁舎が設置されることになるのですが、現在ある24の区役所はそのまま残り、これらはこれまで通り区の窓口として使われるようです。 

大阪市廃止のメリット・デメリット 

大阪市が廃止され4つの特別区に変わる大阪都構想ですが、大阪市を廃止するにあってのメリットやデメリットは、住民投票における大きな判断材料のひとつといえます。 

ここで一度、大阪市廃止のメリット・デメリットをまとめていきます。 

大阪市廃止のメリット 

  • 二重行政の解消 
  • 公共事業の健全化 

大阪都構想推進派が掲げる一番のメリットはやはり「二重行政解消」のようです。

現在の大阪は、府知事・市長共に同じ政治団体のため、それにより府と市で上手く連携し行政における無駄はある程度省けています。 

大阪都構想の成立で、制度的に二重行政を解消したいと主張していますが、都構想が成立すれば自動的に解消されるものとは言えません。 

都構想推進派は現状二重行政がないのは維新の会への支持によるものが大きく、維新の会の影響力が低下した場合は、府と市が上手く連携できる担保がなくなると、 アピールします。

とはいえ、維新の会が仮に影響力を落としても、再び行政の怠慢がクローズアップされればまた影響力は増すでしょう。 

事実、1回目の住民投票否決後、大阪維新の会の影響力は落ちていません。大阪都構想に賛同しなくても二重行政が解消されているならそれでいいという声が根強いことも言えそうです。  

大阪市廃止のデメリット 

  • 再編コストが大きい 
  • 新たなコストが生まれる 

目に見えてわかるデメリットはいまのところこれら2つといえます。 

メリット・デメリット共にさまざまな意見はありますが、実際のところやってみないとわからない部分も多いです。 

ですが、大阪市を廃止し、新たに4つの特別区を設置すれば、再編によるコスト、特別区を維持するための新たなコストが生まれることは確実なので、このことは大阪市を廃止するわかりやすいデメリットといえるでしょう。 

大阪都構想による財政への効果 

大阪都構想は、行政改革なので大阪の財政にも当然影響を与えます。 

財政への効果は住民投票の判断材料になると同時に、仮に都構想に移行した場合の評価の指標にもなります。 

無駄がなくなるのは当たり前 

大阪都構想は二重行政を解消する、ゆえに無駄がなくなるという論調で、大阪都構想を支持する人たちがいます。 

実際のところ、大学の試算で、二重行政解消の効果は数十億円と、思ったような効果が出ない可能性が高いです。

ただ、「無駄がなくなったから評価する」ではなく、「無駄を省いたことによってどのように財政が豊かになったのか」これを評価することが大事です。 

仮に今回の住民投票で大阪都構想が可決され、大阪が都構想に移行した際の財政の評価では、「税金の使われ方」「財政赤字」これら2点に注目しましょう。 

初期費用と維持費 

上記の大阪市廃止によるデメリットにもありましたが、都構想に移行した際は新たに初期費用と運営するための維持費が発生します。 

これらは、都構想によって生じる新たなコストになるため、「大阪都構想による財政への効果」へ、直接的に関わります。 

ここでポイントになるのが、初期費用と維持費にどれだけのお金が必要になるのかです。 

  • 初期費用 約241億円 
  • 維持費 年間約30億円 

これらの費用が特別区設置と維持に必要な行政コストとされています。 

つまり都構想効果で、これまでの税収に加え上記の行政コスト以上の税収が求められるということになります。 

初期費用を初年度で全て償却できれば翌年から維持費の30億円で済みますが、現実問題そういうわけには行きません。 

初期費用の241億円は長期的なスパンで償却するのが一般的で、例えば都構想における行政コストを20年スパンで考えた場合、単純計算で初期費用を年間「241億円÷20年=年間12.05億円」を年間で償却する必要があります(金利を省いた計算)。 

これに維持費である約30億円を加えた金額42.05億円が、20年スパンで考えた際の都構想によって新たに生じた年間の行政コストということです。 

都構想の20年を政治の結果で評価するのであれば、最低でも20年の間に年間で42.05億円以上のプラス効果が都構想によって生まれたかどうかが、財政評価をする上でのひとつの指標になるといえるでしょう。 

大阪都構想による経済への効果 

都構想を推奨する大阪維新の会は、大阪都構想は成長戦略においても必要な制度設計としています。 

成長戦略におけるポイント 

  • 広域行政の一元化で大阪の成長速度が向上 
  • 基礎自治行政の拡充による地域サービスの充実 
  • 民間にできることは民間へ

大阪維新の会はこれらのことを成長戦略のポイントとして挙げています。 

民間の積極投与は現在の形でも可能という見方もできますが、この3つのポイントで特に経済効果に期待できることは、広域行政の一元化による大阪の成長速度が向上する点です。  

大阪府と大阪市、同じような権限を持つ自治体があると、特にインフラ整備などを担う広域行政の仕事がかぶってしまいやすいというのがやり玉に挙げられます。

一方で、大阪維新の会が応援する知事、市長がいる状況で、かつ二重行政は解消されたと市長が宣言をしていることから、事実上広域行政の一元化はできているとも言えます。

わざわざ大阪都構想をやる必要はあるのか、今のシステムでもできるのではないかと疑問を呈する学者がいるなど、何が何でも都構想をする意味があるのか問われています。 

広域行政の一元化は経済効果にも期待 

広域行政を一元化できるということは、大阪全体(堺市以外)のインフラ整備を今ある大阪府で担うことになるため、都市開発がよりスムーズかつ効果的に進めることができます。 

経済に大きな影響を与える物流や人の流れの在り方は、道路や鉄道などのインフラ環境によって大きく左右されるため、本来であれば、都構想に関係なく党派の枠組みを超えた議論を行うことが求められます。

財政・経済へのリスクは? 

大阪都構想による財政・経済への効果や期待はある程度理解できましたが、それによるデメリットやリスクも知っておくことが大事です。 

ここからは、大阪都構想による財政・経済へのリスクについて考えてみます。 

大阪都構想に関しての懸念 

  • 財源の再分配によっては特別区の予算が現象 
  • 無駄を省くからといって景気が良くなるとは限らない 

大阪都構想に関してはこれらの懸念意見があります。 

政令指定都市を廃止し、それを特別区として再編するということは、これまで大阪市に入っていた税金を一度大阪府にいれてこれを再分配するということになります。 

特別区に直接入る税金は「特別区税」などがありますが、これまで大阪市に与えられていた個人市民税、固定資産税、法人市民税などの自主財源は大阪府に入ることになります。 

なので、分配のルールによっては大阪市だった頃に比べ、特別区で使える財源が減ってしまうというリスクが生じてしまいます。 

ですが、大阪市を廃止することで、これまで担っていた広域行政をする必要がなくなるため、財源が減ってしまうことよりも、これまでの大阪市が広域行政でどのくらいの財源を使い、それを省くことでどのくらいの効果が生まれたのかを検証することが最も大事だといえるでしょう。 

自分の暮らしにどのような影響があるのか 

財政や経済など、大阪都構想による効果やリスクはさまざまですが、投票権を持つ住民の方にとっては、「都構想によって自分に暮らしにどのように影響が出るか」をしっかりと考えることが大事です。 

財政の健全化や経済の活発化は確かに大事ですが、都構想をミクロで考えた場合は、行政制度が住民の暮らしにとって良いのか悪いのかが一番重要といえます。 

財政や経済のことは専門的なことなので、これはこれで判断材料のひとつとしてとらえ、それによる暮らしへの影響を考え、想像し、自分にとって最善の選択を心掛けましょう。 

投開票は11月1日 

それでは最後に、大阪都構想住民投票の概要について、簡単に紹介します。 

大阪都構想 住民投票の概要 
対象 日本国籍を持つ18歳以上の大阪市民220万人 告示 2020年10月12日 投開票 2020年11月1日 期日前投票 有、告示翌日から 

10月12日告示、11月1日が投開票です。 

日本国籍を持つ18歳以上の大阪市民220万人を対象に住民投票が行われ、告示の翌日から期日前投票も可能です。 

まとめ 

大阪都構想の住民投票の開票日は、大阪市民にとって今後の暮らしを決めるといえるほどの重要な1日になるといえます。 

東京都が特別区を置く唯一の都市ですが、立地や人口など異なるため、全てが東京都に当てはまるわけでなく、やってみたいとわからない部分も多いです。 

ですが、効果やリスクは各々がある程度それぞれ予測できるので、これらをしっかりと踏まえ、自分にとって最善の選択をするように心がけましょう。