大阪都構想の前回との違いは?住民投票による前回の結果からどう変わった?特別区を設置する目的は?

2020.09.28
  • 大阪都構想は1回目の住民投票で否決され1度は廃案に
  • 2回目の住民投票に向けて行政区画などを見直し経済格差の少ない区割りに変更
  • 特別区は基礎自治サービスの向上を目的に設置される
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大阪市を4つの特別区に再編する大阪都構想の住民投票が111に迫っています。今回の住民投票は2回目のチャレンジになるわけですが、1回目の住民投票から大阪都構想はどう変わったのでしょうか。 

この記事では大阪都構想が1回目の住民投票と何が違うのかを分かりやすく解説していきます。 

この記事を読んで1回目との違いを理解しましょう。 

1度住民投票で否決されている都構想

大阪都構想に関して2回目の住民投票が11月1日に行われることが決まりました。ご存じの方も多いかと思いますが、大阪都構想は1度住民投票で反対多数で否決されています。 

まずは、大阪都構想が1回目の住民投票での否決からどのような道筋で2回目の住民投票に至ったかを解説していきます。 

2015年住民投票で反対が上回る

大阪都構想に関する住民投票の1回目は2015年5月17日に行われました。投票の結果は反対705,585票が賛成694,844票を上回り、わずか0.8ポイントの僅差(Wikipediaより引用)となり、大阪都構想は否決されました。 

橋下氏は政界引退

当時大阪都構想推進派のリーダーとして大阪市長を務めていた橋下徹氏は1回目の住民投票で大阪都構想を実現すべく39回の住民説明会すべてに出席し住民に理解を求めましたが、わずかな差で否決となってしまいました。 

大阪都構想はその後議会で正式に廃案となり、その年で任期満了となった橋下市長は次の選挙に出馬することはなく、そのまま政界を引退することになりました。 

大阪都構想が再び盛り上がった理由

2015年に1度否決され廃案になった大阪都構想ですが、その後形を変えながら大阪自治のあり方は検討され続けました。 

しかし、中々現実的に前に進むことはなく、大阪都構想に関しても大きく取り上げられることはなくなりました。 

ただ、現在は2回目の住民投票が行わるまでにその議論が再燃しています。 

そのきっかけは2019年の大阪知事・大阪市長のダブル選挙でした。 

大阪府知事・大阪市長ダブル選挙で圧勝

2019年大阪都構想の実現を公約に掲げ、当時の吉村大阪市長が大阪府知事に、松井大阪府知事が大阪市長にそれぞれ立候補した知事・市長のダブル選挙が行われました。 

結果は、大阪万博の誘致に成功したことも背景に吉村知事・松井市長の都構想推進派が圧勝をおさめました。 

これをきっかけに大阪都構想は一気に進んでいきます。 

2回目の住民投票へ

知事・市長のダブル選挙に圧勝した大阪維新の会は大阪都構想実現に向けて動いていきます。 

まずはその基本的な制度設計を検討する法定協議会で制度の方針を採択します。この時、大阪維新の会は法廷協議会の中で過半数を取れていなかったのですが、ダブル選挙に圧勝したことでその人気の高さを恐れ公明党が都構想支持に転じました。 

このことで法廷協議会内の過半数を取ることができ方針が可決、その後制度案としてまとめ、大阪府議会・大阪市議会でも公明党の協力を得て賛成多数となり2回目の住民投票までこぎつけました。 

制度的な違い

ここまで1回目の住民投票で大阪都構想が否決されてから2回目の住民投票が行われるまでの経緯について解説してきましたが、ここからは制度自体がどう変化したかを解説していきます。 

大阪都構想の大きな方針である、政令指定都市の大阪市を複数の特別区に再編して大阪府との二重行政を解消するというのは変わっていません。 

しかし、特別区の再編に関して1回目と2回目では違いあります。 

経済的な偏りのない区割り

現状、提案されている大阪都構想は大阪市を淀川区、北区、中央区、天王寺区の4つに再編する案です。 

それぞれ人口も60万人~70万人とほぼ均等な割振りになっています。 

経済的に見ても淀川区には新幹線の駅である新大阪駅、北区には交通の要所であり繁華街の梅田、中央区には観光客も多いミナミ、天王寺区には再開発が進む天王寺地区が割り当てられ経済的な格差も少ないといえます。 

この経済格差のなさが1回目の住民投票から変化した部分で、1回目の住民投票が行われた際の案では5つの区に再編される案で、一部の区に関しては周りの区と比べ経済力が劣ってしまう区も見られる案でした。 

移行期間を長く

さらに、1回目の住民投票の際は2年間とされていた移行期間も4年間に延ばされました。これは制度決定後実施に向けた調整に時間を使うことができるため、実施までの期間を延ばしたとされており、これも1回目の住民投票の案との違いになります。 

特別区を設置する目的は

大坂都構想の肝は大阪市を解体し4つの特別区を編成することにあります。 

では、なぜ特別区を設置する必要があるのでしょうか。 

ここからは特別区を設置する目的を解説してきます。 

より身近な行政へ

特別区の設置をする最大の目的は基礎自治サービスを充実させより身近な行政を行うためとされています。 

現在の大阪市は政令指定都市として交通インフラ整備や、観光施策などの広域自治サービスと義務教育の運営や保育園の管理などの基礎自治サービスの両方を手掛けています。 

この広域自治サービスの部分を大阪府に任せ、特別区は基礎自治サービスのみを行うことが大阪都構想の基本的な考え方です。 

この身近な行政を実現することが特別区設置の最大の目的であると、大阪都構想推進派は主張します。 

区長の選出

さらに、特別区が設置されることで各区の区長選挙によって選ばれます。 

選挙となれば当然政治家はその区に必要な行政サービスはどんなサービスかを考え訴えていくことになるので、各区ごとにサービスを実施したり中止したりすることになります。

これまで大阪市は大阪市長1名しか選挙で選ばれなかったので、住民の声が届きにくいという側面はありました。

これも特別区を設置することで解消される問題の1つです。 

ただ、大阪市にある24の区は公募制がとられ、民間人が公募制によって区長になることができます。実際に任命するのは大阪市長なので、しがらみのない区政が行える制度がすでに存在します。

このため、現状でも区民の声を拾えるのではないかという見方もあり、その場合、大規模なお金をかけて大阪都構想をしなければならないとは言えなくなります。

各特別区の競争による向上

特別区を設置することで行政サービスが区ごとに変わっていくので必然的に区の間での競争が生じます。 

実際に同じ特別区制度を導入している東京では子育て支援を拡充して住民の移転を増やした事例もあります。 

こうして区の間で競争することも特別区設置の目的といえます。 しかしながら、その結果として様々なサービスが廃止されることも予想されます。

1回目の否決を受けたバーチャル都構想の取り組み

ここまで特別区を設置する目的について解説してきましたが、既に大阪都構想は一部の地域で実験的に始まっています。 

それがバーチャル都構想です。 

このバーチャル都構想が今の所上手く行っているので住民投票の世論調査でも賛成が反対上回る結果となっています。 

1回目の否決から2回目の住民投票に向けて着実に成果を出しているバーチャル都構想について解説していきます。 

バーチャル都構想は吉村・松井体制の事

バーチャル都構想とは吉村大阪府知事と松井大阪市長の連携により問題とされているに二重行政を解消し、仮想的に都構想が実現した形を作りだし一部の行政を行うことを指します。 

特別区の設置はされていませんが、二重行政がなくなり広域自治サービスを府が一括して行うとどうなるかという取り組みです。 

これまでは知事と市長の仲が悪く実現しなかった

大阪府と大阪市の二重行政の問題は大阪都構想の前から議論されてきた問題でした。ただ、それが解消しなかった原因の1つとして大阪府知事と大阪市長の所属政党が違い足並みをそろえることができないという問題が常にありました。 

今の吉村知事・松井市長体制で行政同士が様々なに連携したのがバーチャル都構想なのです。

この2人がそれぞれの行政トップに立ったことで実現できたのがバーチャル都構想なのです。 

バーチャル都構想による変革

バーチャル都構想ではこれまで解決できなかった行政課題の1部が解消され、都構想の効果というものを示しています。 

ここではそのバーチャル都構想の一部を解説していきます。 

交通網の整備

バーチャル都構想の成果として交通網の整備が挙げられます。 

例えば、淀川左岸線の延伸工事です。淀川左岸線とは阪神港と大阪市内を結ぶ高速道路だったが、大阪市内までしか接続できず京都や奈良方面に抜ける車も1度大阪市内を経由しなくてはならず渋滞の要因の1つとなっていた。 

しかし、このバーチャル都構想で府と市が連携することで道路の延伸が決定し、市内を経由することなく第二京阪道路に接続できるようになる見込みとなっている。 

さらに、梅田駅と関西国際空港を直結で結ぶなにわ筋線と呼ばれる鉄道網も着工が開始されました。 

このなにわ筋線も必要な鉄道だと言われながらも大阪府と大阪市が費用負担などを調整できなかったことで進んでいなかった事業です。 

これをバーチャル都構想では吉村知事・松井市長の連携によって調整し、着工がスタートしました。 

天王寺公園の再生

さらに、バーチャル都構想の成果として天王寺公園の再生も挙げられます。 

天王寺公園周辺は大阪市から見ると治安が悪く課題が多くあるエリアでしたが、大阪市としては開発を行うメリットが少なく放置されてきた地区でした。 

しかし、大阪府全体から見ると天王寺地区は交通の要所という見方ができ整備に投資する予算を確保することができました。 

この予算を使って天王寺公園を整備、さらに業務を民間委託することで天王寺公園は黒字経営に生まれ変わりました。 

バーチャルでできるなら都構想はいらないという議論

ここまでバーチャル都構想の成功例を上げて来ましたが、成功を収めた一方で今の行政制度でも課題を解決できるのであれば大阪都構想自体は不要なのではないかという議論もあります。 

最後は、その議論について解説していきます。 

選挙次第で知事と市長が別の党所属になっても連携が続く可能性

バーチャル都構想で確かにこれまで進まなかった交通インフラの整備が進んだり、広域自治サービスによって良くなった施設があったりと多くの成果が出ています。 

あくまでも大阪維新の会に所属する吉村知事と松井市長の関係性によるものだという声があり、松井市長も、二重行政は解消されていると議会で発言した中で、人間関係によって成り立ったことを強調していましが、仮に大阪維新の会ではない人物が市長ないし知事になった場合、これまでの連携がなくなるのかといえば、そうは言い切れません。

「バーチャル都構想」と同じことを大阪維新の会ではない首長にも、大阪市民は確実に求めるでしょう。

大阪維新の会ではない人間だから前に戻るという発想は単純であり、大阪都構想を実現させたい勢力の術中にハマっています。

まとめ

ここまで1回目の住民投票から2回目の住民投票に至るまでの流れ、そして制度的な違いについて解説してきました。 

1度否決された大阪都構想がどのような変化をして2回目の住民投票にこぎつけたのか理解いただけたでしょうか。 

1回目と2回目の違いを知ることで大阪都構想をより深く理解するきっかけになれば幸いです。