大阪都構想の危険性とは?都構想の罠や裏側に注目。誰が得をするのか本当の目的について解説。

2020.09.25
  • 都構想の本質は大阪市の廃止だが、それを知らずなんとなく支持している人が多い
  • 大阪都構想は三重行政や財政や都市計画の不透明さを生むこととなる
  • 大阪市特別顧問という都構想応援隊の存在と、都構想の自己目的化
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住民投票を11月に控え、さらに注目を増している大阪都構想。 

しかしそんな都構想にも多くの欠陥や危険性が存在していることがわかってきました。 

大阪維新の会が執拗に口を開きたがらない事実や大阪市特別顧問の黒い噂など。 

本当に都構想は正しいのでしょうか。 

その実態や真の目的について解説します。 

都構想の正体 

維新の主張 

大阪維新の会が都構想をすべき理由として挙げているのは、まず二重行政を解消するということです。 

二重行政とは大阪府と大阪市が同じ広域行政を担当してしまっていることで、府と市の連携がうまくいっていない場合に無駄な事業が多発してしまったり、事業をうまく始動できなかったりすることを言います。 

維新の会によると、都構想を実施するとそのような衝突はなくなり、スムーズな行政と財政の無駄を無くすこととなります。 

そして同時に現在の大阪市には特別区を設置し、そこでは地域や住民サービスを中心に行政を行ってもらい、一切の広域行政は大阪府が担当します。 

こうすることで行政の住み分けが可能となり、無駄なくそれぞれのニーズに即した政策を実行できるようになるのです。 

またそれによって10年で約1兆円の経済効果が生まれるという試算も発表しています。 これが大阪維新の会など都構想推進派の主張です。

大阪市の廃止が本質 

しかしこの説明は実は重要な部分が抜け落ちています。 

それは政令指定都市である大阪市が廃止されるという事実です。 

それこそがこの都構想の本質であり、まずはっきりと市民に対して言っておかなくてはいけません。 

大阪市を廃止するということは、市という完成された構造を丸ごと無くしてしまうということです。 

特別区だとか、行政の一本化だとかの前に、まずこの大阪市を廃止するということでどのような影響が出るのかということを明確に示しておかなければなりません。 

もし特別区を設置したり、府が市の業務を担うというのであれば、それが今まで市が担ってきた部分の代わりになるのかというところを、はじめに検証しなければならないはずです。 

しかし大阪維新の会の説明ではその部分はすっ飛ばして、いきなり特別区や府への業務移転ありきで話が進められてしまっているのです。 

大阪維新の会は、この大阪市を無くしてしまうという事実をあまり市民には知られたくないようで、都構想の説明で言及することがあまり無いのはもちろん、前回の住民投票では投票用紙に「大阪市を無くす」という表記すらありませんでした。 

このことはさすがに問題となり、多くの非難を浴びることとなります。 

今回の住民投票では表記される運びとなりましたが、大阪市が無くなってしまうという事実は大阪維新の会にとって何か都合の悪いことでもあるのでしょうか。 

都構想支持が多い理由 

なんとなく新しそうだから 

大阪都構想はその注目度のわりにとても政治的な政策であるため、説明を聞いても正直ピンとこない人がほとんどではないでしょうか。

そのため、漠然と大阪を東京都のように「世界に誇る大都市にする」というような感覚で捉え、なんとなくかっこいいから、新しいからというような理由で賛成している人も多いかと思います。 

「大阪都構想」という名前も近未来的でかっこいいというのもあるでしょう。 

実際に9月の毎日新聞による世論調査では賛成が49.2%で反対を約10%も上回っていました。 

しかし同時に大阪府と大阪市は都構想について十分に説明しているか、という調査では「十分でない」が71.8%となっており、この調査から多くの人々は、都構想によくわからないがとりあえず賛成しているという人が多いことを示しています。 

東京への対抗心 

大阪人は東京へ対抗意識を持っているという話はよく聞くかと思います。 

実際、そうした意識を持っている人は多いでしょう。 

東の東京と西の大阪という構図、人口の面や産業の面でも首都東京に対して大阪は劣っていません。 

そんな対立意識を都構想は的確に捉えています。 

東京に対抗できる都市でありたい、なりたいという願望を都構想は実現してくれるような気がするのです。 

しかし、大阪を強くする以前にまず大阪市を無くすというのが都構想です。 

強くするどころかまず身を削ってしまっているのです。 

コロナ対策での評価 

極め付けはコロナ対策での吉村知事への高い評価でした。 

吉村知事は3月頃から本格的に流行した新型コロナウイルスの対応で高く評価され、多くの注目と支持を集めました。 

その結果「あの吉村知事が言っていることだから」と都構想に賛成する人も多くなったと言います。 

しかしコロナ対策と都構想はまったく別の話です。 

コロナ対策がうまくいったからといって、都構想もうまくいくとは限りません。 

人で判断せず、冷静に政策の内容を吟味することが大事です。 

二重行政は悪くない 

では実際に都構想は何が問題なのでしょうか。 

いくつか挙げられますが、まず二重行政の問題です。 

三重行政を生む、二重行政解消 

実は二重行政を解消したからといって、本当に行政が一本化するとは限りません。 

というのも、分割できない行政サービスである水道事業や児童自立支援施設、保護施設、市立病院、斎場などは一部事務組合という共同組織で運営していくこととなります。 

そうすると、せっかく二重行政を解消しようとしたはずが「府」「特別区」「一部事務組合」の3つによる三重行政となってしまうと言われています。 

また現体制では大阪府と大阪市の調整だけで済んでいたものが、都構想では府と特別区、そして特別区同士の横の調整も必要になってくるため、今より複雑な行政形態になってしまうという問題も存在しています。 

二重行政は世界の常識 

大阪維新の会が盛んに問題視している二重行政ですが、よく考えれば東京が特別なだけで、日本のほとんどの都市は大阪と同じ行政形態です。 

さらに世界を見てもパリやミラノ、シカゴ、台北など、大阪と似たような規模の都市はたくさんありますが、どこも二重行政が問題視されている様子はありません。 

不安定な財源のゆくえ 

次に財政流出の問題です。 

財源配分は府に依存する 

都構想が実現し、大阪市が解体されると大阪市の財源は特別区へ配分されることになりますが、その際一度財源を府が管理し、そこから各特別区の規模や状況にあった配分をします。 

つまり配分は府によって管理されており、実質特別区は府の行政機関のひとつと変わらない存在となってしまう可能性もあるのです。 

またその財源も一度大阪府へ入ることにより、旧大阪市民が納めた税が市外で使われる可能性もあることが指摘されています。 

そもそも満足いく行政などできるのか 

そもそも特別区は財源も権限も縮小され、特別区相互の関係や連携も必要になってきます。 

そんな中で本当に満足のいく行政を実行することができるのでしょうか。 

大阪が大都市をやめるとき 

能力不足 

大阪市は戦後から半世紀以上もの歴史があり、その中で培われてきた都市計画のノウハウや技術、経験があります。 

それは大阪市という土地柄や住民の実情に即したものです。 

もし都構想が実施されることとなれば、そうした都市計画の権限は大阪府に移ることとなりますが、大阪府はそうしたノウハウや技術、経験を持ち合わせていません。 

果たしてそのような状況で健全な都市計画を行うことができるのでしょうか? 

都市設計の自由は府に奪われる 

特別区になると例えばコンビニの出店に関する計画ですら、府に申し出さなければならなくなります。 

市が持っていた都市計画の権限を特別区は持っていないのです。 

そのような状況で本当に地域のニーズに即したサービスが提供できるでしょうか。 

どうしてもかかってしまうコスト 

初期費用とランニングコスト 

大阪維新の会は再編にかかるコストについては、例えば現庁舎をそのまま利用するなど、できるだけ費用を抑えた移行を目指していますが、それでも初期コストは計240億円、年間のランニングコストも約50億円かかると予想されています。 

特別顧問の黒い噂 

学術界から正当性をアピール 

大阪市には大阪市特別顧問という、市に対してアドバイザーの役割をする人たちが居ます。 

特別顧問は大学教授や研究者など学術分野で活躍している人が多く、彼らは基本的に大阪都構想へ賛成の意見を表明しています。 

特別顧問とは言いますが、おそらく維新の会が主張する都構想の理論の正当性を学術界の権威の方々に保証してもらう、そういう意味の存在だと思われます。 

そして特別顧問には少しあやしい噂もあります。 

現在の特別顧問の中にはもともと都構想を強烈に批判していた人がいたのですが、なぜか特別顧問に選出された途端に意見を変え、賛成を表明するようになったのです。 

単純に意見が変わったのでしょうか、それとも何か裏があったのでしょうか。 

ともかくこの大阪市特別顧問は現在も都構想の正しさをールし続けています。 

活用されたのは橋下市政下 

この特別顧問は2009年、当時の平松市長によって創設されましたが、大々的に活用され始めたのは2011年に当時の橋下市長が突然20人を抜擢したあたりからだといいます。 

橋下元市長といえば、都構想を推進する大阪維新の会の生みの親です。 

もしかすると橋下元市長は大阪市特別顧問を、都構想の宣伝機関のようなものにしようとしたのかもしれません。 

ともかくこの大阪市特別顧問は現在も都構想の正しさをアピールし続けています。 

結局誰が得するのか 

維新の矛盾 

大阪都構想は維新の会結成以前から、大阪行政でしきりに議論されてきた政策のひとつでした。 

府と市の行政のすれ違いが多かったのは事実のようで、その度に都構想の話は挙がっています。 

そしてそれを初めて本格的に実行しようとしたのが橋下元市長でした。 

そして実際に2015年に住民投票まで持ち込み、もう少しで都構想成立というところまできましたが、結果は否決されます。 

その後、橋下氏は政界を引退し都構想は幻と終わったかに見えました。 

しかし維新の会は再び都構想を実現すべく奔走。 

前回の住民投票から5年、2度目の住民投票が今年に行われることが決定しました。 

ですが、果たして今回の都構想と前回の都構想は一緒でしょうか。 

もちろん区割りや費用などは違いますが、そういうことではなく、都構想は自己目的化して、もはや純粋な政策ではなく、維新の会の意地のようなものになってしまっているのではないかということです 

大阪維新の会は都構想を党是とし、橋下徹元市長が都構想を打ち出した頃に結党されました。 

まさに都構想を実現するために生まれた政党のようなものです。 

そしてその使命の通りにいまも都構想を実現しようとしています。 

大阪で絶大な支持を持つ維新の会ですが、その人気を維持するためにも都構想をなんとか完成させなくてはいけない、そう考えているのかもしれません。 

もしそうだとしたらその都構想はもはや以前のように本来の意味での実現を目指していた都構想ではなく、まったく別の信用できない存在となってしまっています。 

そこでは2025年の万博の存在も意識されているのかもしれません。 

中身が違う人間 

都構想が実現をして、一番得をするのはもはや住民ではなく、大阪維新の会かもしれません。 

党是としてきた念願の一大事業は実現し、今度は大阪市を無くしたことによって、府だけを管理すればよくなります。 

特別区も府の裁量にかかっています。 

万博に向けて党の勢いも今まで以上に高まるでしょう。 

よくミステリーや探偵もので犯人を探す際の常道として、「一番得したやつは誰か」を考えると良いといいます。 

そしてそれは現実世界でも有効ではないでしょうか。 

都構想は大阪維新の会がやりやすいように変わってしまったのかもしれません。 

純粋な政策のひとつだった頃とは違い、顔は一緒だけれど、中身が違う存在となってしまったのです。 

まとめ 

人気や勢いというのは時に予想外の結果を生むことがあります。 

後々、よく考えてみると至極単純でなぜ気付かなかったのだろう、と思うこともよくあるかと思います。 

メディアや力のある存在は時にそうした空気を作りますが、私たちは何かひとつを鵜呑みにすることなく、賛成と反対の意見両方を知る得をしているのは誰かを考える、など冷静に判断することが大切です。 

そうすることで見えなかった事実が見えてくることがあるかもしれません