大阪都構想の支持率は?吉村知事の人気により賛成率が上がっている?賛否拮抗の都構想について解説。

2020.09.27
  • 2020年9月段階の大阪都構想の支持率は賛成が優勢
  • 都構想の支持率上昇の背景に吉村大阪府知事の人気がある
  • 知事選、市長選、地方議会選挙に勝利した大阪維新の会が優勢だが、まだまだ予断を許さない状況
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大阪維新の会が推進する大阪都構想について、賛成が4月実施の世論調査に比べ9月実施の世論調査で増加していました。

その背景には新型コロナウイルス対策が評価された吉村大阪府知事の人気があります。

一度は否決された大阪都構想がどうして、再度住民投票にかけられるようになったのでしょうか。賛否拮抗の都構想について解説します。

都構想に対する現在の支持率

大阪市の廃止と特別区への移行などを問う「大阪都構想」の二度目の住民投票が2020年11月1日に決まりました。投票権を持つ大阪市民は、都構想に対しどのように考えているのでしょうか。今回は、毎日新聞と読売新聞が実施した世論調査を紹介します。

毎日新聞の世論調査

2020年9月6日、毎日新聞社は大阪都構想についての世論調査を実施しました。世論調査の方法は電話調査です。

これによると、新型コロナウイルスの感染が現状のままならば住民投票を実施するべきとの意見が過半数に近い48.2%、感染終息後に実施するべきだとする意見が35.0%でした。

また、大阪都構想に対して、賛成する意見が49.2%、反対する意見が39.6%です。主な賛成理由は二重行政が解消されるからということと、思い切った改革が必要だから、ついで、大阪の経済成長につながるからです。

逆に、反対意見で最も多かったのが大阪都構想のメリットがわからない区名などの住所表記が変わるのがいや、大阪市がなくなるからというものです。

読売新聞の世論調査

毎日新聞とほぼ同じ、9月4日から6日に読売新聞社も電話調査を実施しました。この調査でも、賛成が48%、反対が34%と、賛成が反対を大きく上回っています

読売新聞では4月にも大阪都構想の賛否について調査を行っていました。この時は、賛成が43%、反対が40%で都構想への賛否が拮抗しています。つまり、9月の調査において、4月よりも都構想への支持が上がっていることがわかります。

吉村大阪府知事の人気

大阪都構想を考えるうえで、大阪維新の会の代表代行で大阪府知事をつとめる吉村洋文氏について知ることは必要不可欠です。

吉村洋文氏とはどのような人物なのでしょうか。また、新型コロナウイルスに対して、彼はどのような対応を行い、府民がそれをどう評価したのでしょうか。

吉村洋文府知事の政治家経験

吉村洋文は1975年生まれの45歳、大阪府河内長野市の出身です。九州大学を卒業後、司法試験に合格し弁護士となります。歌手のやしきたかじんの顧問弁護士を務めたことでも有名です。

2011年、吉村は大阪維新の会の代表だった橋下徹氏に請われて大坂市会議員選挙に立候補し、当選しました。そして、2013年には市議団の政調会長をつとめます。

2014年には維新の党の公認候補として衆議院議員選挙に出馬ました。選挙区選挙では自民党の前職に敗れますが、比例近畿ブロックで復活当選しています。2015年、橋下徹大阪市長の任期満了に伴う大阪市長選に出馬し当選を果たします。

その後、松井大阪府知事と入れ替わる形で2019年に大阪府知事・大阪市長のW選挙を実施します。その結果、松井一郎は大阪市長に、吉村洋文氏は大阪府知事になりました。

吉村大阪府知事が指導力を発揮したコロナ対策

2020年9月4日~6日にかけて、産経新聞は吉村府知事の新型コロナウイルス対策についての世論調査を行いました。その結果、吉村府知事の対策を評価する声が8割を超え、彼に対する支持率は75.5%に達しました。

具体的な施策もさることながら、吉村の力強いリーダーシップと発信力に対し、府民が信頼を高めたのが大きな要因です。また、国に先駆けて出口戦略である「大阪モデル」を作成したことも評価が高まった理由です。

幅広い層から支持を集める吉村府知事

カリスマ的な人気を誇った橋下徹氏との違いは、幅広い層からの支持かもしれません。実際、橋下市長は強力なシンパを生み出した一方、容赦のない舌鋒などから敵を作りやすいという弱点がありました。

それに対し、吉村は新型コロナウイルス対策の評価などもあり、より広い層から支持を受けています。繁華街の土産物店で彼の顔がプリントされたグッズが売り出されていたことなどからも、人気の幅広さが伺えます。

住民投票に政治家としての進退をかけた松井大阪市長

吉村と二人三脚で大阪都構想を進めてきたのが大阪維新の会代表の松井一郎氏です。松井は、大阪維新の会の創設者である橋下徹氏とコンビを組んで大阪都構想実現のため動いていました。

しかし、2015年に盟友ともいえる橋下氏が政界を引退したことから大阪維新の会のリーダーとなります。そして、大阪府知事として政界に残りました。松井氏の大阪都構想にかける意気込みは並々ならぬものがあります。

2020年9月23日に日本記者クラブで開かれた会見で、松井は住民投票が否決された場合の進退について、負けたら政界を引退する考えを示しました。

大阪府議会と大阪市会における大阪維新の会の議席数

関西地域以外に住んでいる人にとって、大阪都構想について吉村府知事や松井市長の印象が強いかもしれません。しかし、大阪府議会や大阪市会でも、大阪維新の会は着実に議席を上積みしていました。

大阪府議会における大阪維新の会の議席数推移

大阪維新の会は、自民党から独立した議員によって2010年に結成されました。2011年の大阪府議会議員選挙では57議席を獲得し、過半数を上回ります

2015年、定数が88に削減された大阪府議会議員選挙では過半数にわずかに届きませんでしたが、府議会第一党の座を守ります。2019年の大阪府議会議員選挙では再び過半数を超える議席を獲得します。

その一方で、大阪都構想に強く反対し続けた自民党は党勢回復のきっかけをつかめず、野党第一党の座をかろうじて維持している状況です。

大阪市会における大阪維新の会の議席数推移

大阪都構想が争点となった2011年の大阪市会議員選挙において、大阪維新の会は20議席を増やし市会第一党となりました。半面、民主党や自民党、共産党は議席を減らします。

2015年の選挙では議席数をわずかに増やしましたが、それでも過半数には届きませんでした。そして、2019年に行われた選挙で、過半数にあと一歩と迫る40議席を獲得します。

大阪都構想が実現しても存続する大阪府議会と比べ、大阪市会は都構想が実現すると消滅してしまいます。それだけに、反対派の市会議員は府議会議員よりも強烈に抵抗してきました。その中でも、維新は着実に勢力を拡大していたのです。

賛否が拮抗した2015年の住民投票の結果

大阪府議会と大阪市会では、大阪都構想の是非を問う住民投票の決定が可決されました。これは、住民投票に反対していた公明党が、都構想には反対だが、住民投票には賛成すると路線転換したためです。

2015年5月17日、住民投票が実施されました。投票の結果、賛成が694,844票、反対が705,585票となり、大阪都構想は否決されました。投票結果を受け、橋下市長は政界を引退します。

住民投票は否決されましたが、その差が0.8%という僅差だったのは大阪市民の中に賛否両論があったからなのでしょう。

2015年の住民投票と今回の住民投票違いはあるのか?

大阪都構想の是非を問う住民投票は2015年に否決されました。その時の住民投票と、今回行われる住民投票に違いはあるのでしょうか?2015年の都構想案と2020年の都構想案をそれぞれ確認してみましょう。

2015年当時の大阪都構想の案

2015年に賛否が問われた大阪都構想の案は次の通りです。まず、大阪市の廃止は2017年4月と定めました。次に、現在の24の行政区は「北区」「湾岸区」「東区」「南区」「中央区」の5つの特別区に再編されます。

大阪市長や大阪市会は廃止とされ、各特別区には公選の区長と同じく公選の区議会が設置されます。得票率に関係なく投票結果は成立し、1票でも賛成が反対を上回れば大阪市の廃止と5つの特別区の設置が決定するという内容でした。

2020年の大阪都構想の案

2020年に賛否が問われる大阪都構想の案は次の通りです。2015年の案では投票後2年で廃止とされた大阪市は2025年1月に廃止となります。また、特別区の数は4つとされ、「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」となります。

2015年の案と異なり、地域住民にとって聞きなじみのある区名を特別区の名前に採用しているのがわかります。

また、行政コストが増加するとの批判に配慮し、特別区役所は新設せず、既存の施設の活用でまかなうとされます。

それに加え、投票用紙に「大阪市を廃止する」という文言が追加されました。これは、前回の投票用紙だと大阪市が存続すると誤解する可能性があるとの指摘にこたえたものです。

どうして、一度否決された都構想が復活できたのか?

大阪都構想は2015年に一度否決され、特別区移行の案は廃案となりました。しかし、大阪維新の会は実現をあきらめず、二度目の住民投票にこぎつけます。どうして、一度否決された都構想が復活できたのでしょうか。大阪維新の会が選挙で勝利し続けたこと以外の2つの要素をとりあげます。

公明党が反対から賛成に転じたから

もともと、公明党は大阪市を存続させたまま現在の行政区を再編する総合区を主張していました。大阪都構想を審議する法定協議会において、公明党と大阪維新の会は対立し続けます。転機となったのは2019年4月に行われた「出直しクロス選」でした。

この選挙で大阪府知事に吉村前大阪市長が、大阪市長に松井前大阪府知事が対立候補に圧勝します。加えて、大阪府議会議員選挙や大阪市会選挙でも大阪維新の会が勝利し第一党となりました。

選挙結果を受け、公明党は国政選挙で維新と競合を避けるため、住民サービスが低下しないことを条件に総合区の主張を取り下げます。そして、2019年5月13日に公明党は大阪都構想への賛成を表明しました。

反対していた自民党が反対一枚岩でなくなったから

大阪都構想に対し、終始反対し続けたのが自民党です。自民党は公明党、立憲民主党、共産党とともに反都構想陣営の中核を担います。

ところが、自民党の中でも大阪府議団と大阪市議団で意見の違いが表面化します。大阪都構想が実現しても議席が残る大阪府議に比べ、4つの特別区に分散され、選挙の見通しが不透明な市議団では考え方に違いが出ても不思議ではありません。

2020年7月9日、自民党大阪府議団は総会を開き、新たな幹事長として都構想に賛成する原田亮氏を選出しました。この選出を巡り、一貫して反対を唱える大阪市議団との調整は困難が予想されれました。

しかし、2020年8月、自民党大阪府連は大阪都構想への反対を決定します。また、2020年9月には都構想賛成の発言を繰り返す原田亮氏に対し、大阪府議団は厳重注意をするなど、あくまでも反対の姿勢を打ち出している状況です。

投票の鍵を握る中間層の動向

2015年の住民投票に比べ、今回は大阪維新の会にとって有利な状況です。しかし、まだ都構想が可決されるといいきることはできません。

2015年の住民投票の時、賛否を明らかにせず、棄権、または無効となった票が70万票以上あったからです。この中間層がどちらに傾くかによって、投票結果は大きく変わります。まだまだ、流動的な情勢というべきでしょう。

まとめ

大阪都構想の支持率は拮抗し、告示日の段階では賛否の差はほとんどありません。大阪維新の会の代表である松井大阪市長は政治家としての進退をかけて挑んでいますが、「大阪市廃止・特別区廃止」というフレーズは想像以上のインパクトを与えており、情勢は不明です。

大阪で実施される数々の選挙で勝利を重ねてきた大阪維新の会にとって、今回の住民投票は正念場です。吉村府知事・松井市長のラインで二重行政の解消がなされた現状を踏まえると、大阪都構想をわざわざせずとも、今のままでいいのではないかという意見が増えてもおかしくなく、投開票日までの攻防に注目が集まります。