都構想による堺市への影響とは?メリットやデメリットについて解説。 実現すると堺市はどうなる?

2020.09.30
  • 大阪都構想が可決されても堺市にすぐに影響が出るということは考えにくい
  • 都構想が可決されると政令指定都市の財源や自治権を失うデメリットが堺市にはある
  • 都構想が可決されても堺市へのメリットは大阪市と同じ教育や給食が受けられる程度
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2020年11月1日、大阪都構想をめぐる住民投票が行われます。 

大阪市民が大阪市の未来をどう評価するか、非常に注目を集めております。 

大阪都構想は大阪市だけの問題ではありません。同じ大阪府の政令指定都市にあたる堺市にも大きく影響を及ぼします。

さらに、大阪だけでなく今後の日本の地方政治が大きく見直されるほどの影響をもたらします。本記事では、大阪都構想による堺市の影響やメリットとデメリット、今後の堺市がどのようになるかを解説していきます。 

大阪都構想が可決されたら、堺市はすぐに影響を受けるのか 

今回の住民投票で可決されてもすぐには影響をうけない 

もし今回の住民投票で大阪都構想が可決されても、いきなり堺市に影響はありません。もともと堺市も大阪都構想の計画の一部に入れて議論されていました。 

しかし、今回の都構想で焦点になっているのは、大阪市を4つの特別区に区分けする点です。

現時点では都構想の計画案の中に、堺市は含まれていないので直接影響を受けることはないといえるでしょう。 

現職の堺市長も任期中に都構想の議論をしないと公言 

2019年6月に行われた堺市長選挙で当選した永藤英機市長も「現職中に都構想に堺市を含める議論はしない」と当選後の翌日の記者会見で公言している為、任期中に都構想に対しての議論が行われることはないと考えてよいでしょう。 

政令指定都市「堺市」がもつ政治的パワーとは 

政令指定都市は自治体で最も力が強い都市 

政令指定都市は、現在の日本の地方自治制度のなかで、他の市町村よりできることがたくさんあります。 

教育にかかわるサービスを市が独自で管理することが認められている 

政令指定都市は教育サービスに携わる教員を市独自で採用する権限があります。 

また、子ども相談所の設置も政令指定都市は独自で設置することができるため都道府県に伺いを立てる必要がありません。 

国道や府道を政令指定都市が一括して管理することができる 

国道や府道の管理も政令指定都市で行うことができるので、市内の道路整備などの方針を、自分たちの自治権の範囲で決めて整備することができます。 

結果的に都市計画が自らの手で行える 

教育サービスや道路など、社会インフラの整備を独自の裁量で行えることで、結果的に自分たちの都市計画を自ら考え、決定することができます

都市計画は都道府県が認めないと行えない計画もあるので、政令指定都市はそうした手間を省けることがメリットです。

つまり堺市は地方都市の中で強力な政治パワーを持った自治体なのです。 

堺市が都構想に含まれることで得られるメリットとは 

堺市が大阪都構想に含まれた場合に考えられるメリットは大きく分けて2つあるといえるでしょう。 

教育サービスの充実 

大阪都構想によって堺市を特別区にした場合、特別区内のいろいろな社会インフラや教育サービスは均一化を図らないといけません。

そのため、現在の大阪市と同じ水準の教育サービスは受けられるでしょう

たとえば、塾代の助成(中学生に限る)や、1人1台のダブレットPCの導入が挙げられます。塾代の助成とは、現在大阪市の市立中学に通う中学生の保護者が就学援助制度を受けている場合、月額1万円を手助けしている制度です。

また、タブレットPCを1人1台の割合で、大阪市立の小中学校に導入しており、デジタル機器が普及している現代に即した教育を提供しているといえるでしょう。 

敬老優待乗車証の使用が認められる 

70歳以上の方は、大阪市営の交通インフラが利用し放題になり(有料)、さらに利用できる範囲が堺市まで拡大することになるでしょう。

交通インフラを乗り放題できる制度の導入と利用路線の拡大が実現されれば、メリットを享受できる高齢者が増えることにつながります。 

堺市が都構想に含まれることによるデメリットとは 

メリットだけでなく、都構想によって堺市が受けるデメリットは、大別すると3つに分類されます。 

政令指定都市の権限が消滅する 

政令指定都市であるがゆえ、様々な独自裁量権が認められていると述べました。 

この独自裁量権は、都構想の特別区になった段階ですべて消滅します。

都構想は特別区を制定します。この特別区は政令指定都市のように独自で決定権をもつことはできません。

つまり、これまで独自決定権が認められていた教育サービスや都市計画は、基本的に大阪府にお伺いを立てて進めていかねばならなくなります。 

このように政令指定都市としての権限が失われてしまう点は都構想によるデメリットといえるでしょう。 

政策の優先順位が低ければ、サービス品質の低下やインフラの発展が遅くなる 

行政上の独自決定権だけでなく、堺市がこれまで管理していたお金もすべて大阪府が管理する仕組みになるため、たちまち堺市はお金がなくなります。

つまり、大阪府がお金を出して投資する必要があるかないかを議論するため、投資が必要とされないとどんどんサービスの質は低下します。

また、投資決定されるまでの時間がかかると、インフラ整備に時間がかかるため、結果的に住民は不便な生活を強いられることになるでしょう。 

住民が分断され、特別区の住民はワガママになる 

大阪市の4つの特別区に堺市を入れた5つの特別区が、それぞれ大阪府に統合されることになると、人口はほとんど同じでも払う税金や保険料の額が高い、サービスが悪いなど、同じ特別区でも区間で不公平が生じます。大阪府はそのつど、お金周りの調整を行います。

しかし、調整したくても特別区をすべて均等にすることは難しいです。

なぜなら現在の大阪市の中で税収が比較的多く見込める地区と見込みにくい地区が存在しているからです。特別区にしたところで、税収面が同じになるとは考えられません。

そのため、特別区間で格差が生じることになり、結果的に税金を高く払う特別区民から「他人を食わせる前に、自分たちに還元しろ」と不満が生まれます。

特別区でこのように考える人たちが出ることが簡単に想像できてしまいます

ましてや、大阪府が特別区外の市町村に税金を優先して渡していく決定がなされたら、今度は特別区全体が「なぜ特別区外に税金を渡すのか」といった形で黙ってないでしょう。

つまり、都構想がすすめば、自治意識がなくなり、利己主義的な住民が増えていくでしょう。独立している市だからこそ、住民1人1人がすすんで「自分たちで市をよくする」ために、政策や税制に一定の理解を示せていたのに都構想が連帯感を壊す原因となり、堺市にも同じことが言えるでしょう。 

堺市と都構想のこれまでの歴史まとめ 

実は都構想案にずっと反対していた堺市 

大阪都構想に堺市は反対の立場をとっていました。大阪都構想の実現を政策理念に掲げている「大阪維新の会」は、政令指定都市である堺市を「都構想賛成派」にするべく、これまで3度市長選挙に候補者をたてて戦いました。 

1度目も2度目も選挙では大阪維新の候補者は勝利できず、堺市民の自治意識は高いと思われてきました。

しかし、3度目の選挙では大阪維新の会が推薦した元府議会議員の永藤氏が勝利しました。大阪都構想に反対していた当時の市長が政治資金の問題で辞職したことが風向きが変わった理由といわれています。 

大阪都構想について触れなかったことも勝因となる 

これまで「堺市を特別区にする」ことをスローガンにして連敗していた維新の会はいったん都構想についての主張をせず、堺市と大阪都構想の共存共栄を主張する形でアピールしたことで「堺市がなくならない」イメージを抱かせることに成功したことも勝因の一つとなったといえるでしょう。 

堺市の未来はどうなるのか~これから行われる可能性があることまとめ~ 

出直し(任期満了前の辞任)選挙 

永藤堺市長はもともと大阪府の議会議員で、都構想の考えに賛同していました。 

任期まで都構想に通いて議論しないと伝えていましたが、在職期間中に大阪都構想についての民意を問う大義名分で、出直し市長選を行う可能性もあるでしょう。 

もしも再選を果たした場合、民意に基づいたものとして大阪都構想の議論を堺市でも始める可能性があるといえます。 

堺市だけではない 政令指定都市がなくなることが意味すること 

地方自治のあり方が根本からくつがえる 

政令指定都市がなくなることは、地方の衰退を意味します。 

政令指定都市は、通常の市町村とは権限も違い都市の開発を行い、地方を豊かにするための、必要な制度です。

今回の大阪都構想が可決されて、今後堺市が追随する形になれば、全国で一斉に大阪都構想の特別区制度が推し進められる気運が高まり、特に政令指定都市の在り方は見直され、地方の自治意識はどんどん薄らいでいくでしょう。

また、財源が各都道府県に集中するため、投資開発すべき部分を選択し、ムダを集中して切り落としていく動きが加速することが予想されます。 

そうなると、見捨てられる地方が生まれます。

見捨てられた地方は、限りある資源の中でサービスを維持したりインフラを整えたりする必要があります。

しかし、元手となるお金がなければサービスも提供できずインフラも整備できません。それは結果として同じ地方でも格差が拡大し、サービスの品質低下につながります。 

地方自治体の本来あるべき地方を活性化させる目的は失われ、政令指定都市が絶滅する結果を生むことになるでしょう。 

国政でも堺市を特別区に入れて都構想を展開してほしい狙いがある 

実は堺市だけの問題ではなく、冒頭にも述べたように都構想は日本の国政にも影響を及ぼします

現在、菅内閣が組閣しておりますが菅内閣は都道府県を廃止して近隣の都道府県をグループに分けてひとまとめにして政策や財政を調整する道州制を議論し党内に訴えかけております。

いわば大阪都構想を例にするなら①「大阪市」が解体され、②「4つ(堺市が入れば5つ)の特別区」が設置され、③「政策やお金は大阪府が管理する」でした。

では、道州制はどのように説明できるかというと①解体されるのは「都道府県」、②「7つ(北海道・東北・関東・東海・関西・四国・九州)の道州」が設置され、③「政策やお金は日本が管理する」流れになるといえます。 

つまり、国は現在推し進めたい道州制にうまく大阪都構想を持ち出して、世論を動かそうと機会をうかがっていると思われます。 

そして堺市は、国と大阪府が財政のムダの支出を抑えるために、地方自治の権限を剥奪し財源も減らされる生贄にされることになるでしょう。 

おわりに一言 

ここまで堺市への都構想の影響とメリットとデメリットを中心にお話ししてまいりました。

大阪都構想は堺市にも影響が大きい問題ですが、日本の全体にも非常に影響のある問題です。

この機会に、地方自治とは何かを今一度考えるキッカケにしてもらいたいと願います。