都構想はなぜ必要?本当の目的は?吉村知事と松井市長が大阪都構想にそこまでこだわる理由とは?

2020.09.27
  • 「府市合わせ」とは何か?
  • 都構想のメリット・デメリット
  • 今、都構想実現にこだわる理由
この記事は14分で読めます

長らく大阪は府と市による摩擦が起こり、「府市合わせ」と呼ばれる二重行政が問題視されてきました。
今回の大阪都構想を巡る住民投票では、そうした状況を変えられるかどうかが重要なポイントとなっています。
さらになぜ吉村知事と松井市長はそこまで都構想にこだわっているでしょうか?

そこには大阪維新の会の事情やコロナ、さらには2025年に開催される万博も関わってきていました。
いま話題となっている大阪都構想について解説していきます。

大阪の「府市合わせ」

「府市合わせ」とは

大阪府と大阪市では長らく「府市合わせ」と揶揄される状況にありました。
「府市合わせ」とは府と市がお互いにうまく連携を取れていないことにより、非効率的な行政を行ってしまうことをいいます。

大阪ではそうした、一見「どうして?」と思えるようなことが今までに頻繁に起こっていました。

「府市合わせ」な鉄道の話

「府市合わせ」を象徴するのが、鉄道の問題。

東京では無数に存在する地下鉄のほとんどが私鉄などの沿線へと直結し、JRとの連携も相まって、東京全体から関東圏の郊外まで一本で行ける、JR、東京メトロ、私鉄が提携するなど、効率的な移動を可能としています。

一方、大阪では都市を貫く線はほぼなく、地下鉄は地下鉄でしかいけないところまで、JRもその非効率的な路線状況や過密ダイヤにより必ずしも利用しやすいとは言えない状況となっています。

逆に特別区が採用されている東京都であれば都が全体のインフラを考えれば良いので、効率的な交通網の構築が可能となっています。
特に大阪南部から新大阪や京都、大阪北部から関西空港や和歌山を目指す時の大阪市内の貫通がネックと言われています。
観光や都市間移動の利便性を向上させたい府に対し、市は当然市内の事情を優先に考えます。

その結果、今の大阪は大都市としてのグランドデザインを描きにくく、同時に住民のニーズに即した細やかな行政も難しいという負の連鎖が出来上がってしまっているのです。
こうした摩擦は度々起こっており、そのたびに大阪は「府市合わせ」と言われてきました。

摩擦の歴史

大阪府と大阪市のバトルは昔から

実は府と市では歴史的にも長らく対立が続いてきました。

戦前から大阪市は目を見張るような発展を遂げてきましたが、最初に府と市の対立が表面化したのが戦後の特別市制度のときです。
特別市制度とは、府県から独立し、府県と同程度の権限を持つ都市を作るという制度でした。

この時、大阪はこの特別市の是非を巡って府と市で対立しました。
しかしその後も決着は着かず、この特別市自体が全国的にも一度も成立を見ないまま廃止となりました。
その代替案として誕生したのが、現在の政令指定都市制度です。

しかしこの政令指定都市は一般市よりは権限が与えられ、一定の地方交付税の配分を受けられるなどのメリットはありましたが、あくまで府県の元に管轄される都市であり、先ほどの特別市などとは別物です。

加えて、大阪府と大阪市では連携がうまく行われず、結果的に府と市で同じような事業をするケースもありました。この状況を二重行政であると痛烈に批判した大阪維新の会の橋下徹氏らを中心に主張され始めたのが大阪都構想でした。

都構想のメリット

大阪都構想にはいくつものメリットがあると大阪維新の会など都構想推進派は考えていますが、その中でもよく説明されている、代表的な2つの効果を取り上げます。

経済効果

ひとつ目は新たな経済効果で、二重行政を解消するメリットと言われています。
今までは府と市がそれぞれインフラや公共事業などを管理していたため、たびたび府と市の連携が取れておらず、ひどい場合にはそれぞれがそれぞれの計画で物事を進めてしまい、住民の声や需要が無視される場合もありました。

都構想で特別区を採用することによって、行政の仕組みを明確化し、無駄遣いを削減、財政も一元管理、多くの分野での民間化が可能となり、経済効果を得られるとされています。

ある試算によれば、都構想実現によって10年で約1兆円超の経済効果が期待できるとも言われています。

しかし、その試算において二重行政解消効果は数十億円しかなく、試算に使われたデータも間違いが多く見つかるなど、この試算に不透明感が見られ、大学教授などが批判しています。

大阪府と大阪市の連携が図られており、結果的に、二重行政は解消されていると松井市長が明らかにするなど、思ったほどの経済効果はないのではないかという見方が出てきている状況です。

住民サービスの向上

もうひとつ都構想推進派がアピールするのが、住民サービスの向上です。
都構想によって創設される特別区では広域業務を担当せず、より地域に根ざした行政を行うこととなります。

それにより、地域のニーズに即したきめ細やかな住民サービス財政運営が可能になる、これが都構想推進派の主張のポイントです。

一方、現在府と市が担っている広域的な行政面は府が一元的に管理することとなり、より一貫した計画のもとに行政を運用することが可能となります。

しかし、特別区4区に与えられる財源は、これまで大阪市が受け取れていた財源よりも少なくなります。その額はおよそ2000億円とされ、その分は大阪府へ吸収されてしまいます。

自主財源は限られ、どこまで思い切った行政サービスが行えるのか、そもそもこれまでの行政サービスは確保できるのかなど、こちらも不透明感がぬぐえません。

都構想のデメリット

一方で都構想によるデメリットも、もちろん存在します。
こちらも代表的な2つを取り上げます。

コミュニティの崩壊

デメリットとしてまず言われているのが、今までのコミュニティが崩壊してしまうのではないか、ということ。
大阪市は半世紀以上前に現在の形となり、その中で歴史やコミュニティを築いてきました。
しかし今回の都構想では現24区をわずか4区へと再編してしまうことになり、どのように区割りをしようが、コミュニティへの影響が出てしまうのは必須と言われています。

例えば都構想における4区のうちのひとつである中央区では、大きな繁華街と下町が同居するような形となっており、どうしても地域の形は変わっていかざるを得えず、街自体も変わっていってしまうのではないかと危惧されています。

政令指定都市の特権を捨てる

もうひとつは政令指定都市をやめてしまうことによるデメリット。

現在大阪市は政令指定都市ですが、もし都構想が住民投票によって可決すれば、大阪市は消滅することとなり、ひいては政令指定都市ではなくなるということになります。

今までの歴史上、政令指定都市は認められることはあっても、廃止されたことは一度もありませんでした。

もし可決されれば政令指定都市の廃止を決定した全国初の住民投票となるわけですが、政令指定都市ではなくなることによって、具体的にどのような影響が生じるかというのは実際のところ未知数なのです。

政令指定都市には独自の権限や財源が移譲され、独自の税収も許可されます。

もともとは都道府県に縛られず、地域にきめ細やかな行政を行うための仕組みでした。

そのため大阪市が廃止されれば、府が特別区の財源配分等を行うことになるため、逆に地域に対するきめ細やかな行政は行われなくなるのではなかといった声も上がっています。

なぜいま都構想?

旗を振った橋下徹

都構想自体は1950年代あたりから議題に上がり、事あるごとにたびたび言及されてきた政策でした。

2010年に橋下徹元府知事が大阪維新の会を結党すると、大阪都構想を党是とし、都構想は現実味を帯びて進められていくこととなります。

当時橋下氏は都構想を地方分権、道州制の手始めとして位置づける発言をたびたびしていました。

地方分権や道州制といった、より大きな目標を達成するためにまず取り組むべき政策が都構想であると位置付けられたのでした。

コロナの意外な効果

現吉村府知事はもともと橋下徹氏の秘蔵っ子とも言われ、その若さとカリスマ性で前回の住民投票後のダブル選挙で市長となってから、現松井市長とともに大阪行政で活躍してきました。

そしてその吉村知事が、今年に入ってからの新型コロナ対策で対応を高く評価され、広く支持を集めました。

大阪維新の会の視点

維新の勢いがあるうちにやりたい

大阪維新の会は2010年に橋下徹元府知事によって創設されました。

大阪維新の会は、既存政党に膿んでいた大阪行政に新しい風を送り込みました。

その勢いと若さも相まって、急速に支持を獲得、既存政党を駆逐するかの如く府議会や市議会で議席を得ていきます。

結党から5年目の2015年には最初の大阪都構想を問う住民投票が行われ、わずか0.8%という得票率の差で敗れたものの、およそ半数の市民が大阪を変えたいと思っていることも白日のもとにさらすこととなりました。

その後、橋下徹氏は引退したものの、同じ年に行われた府市ダブル選挙では大阪維新の会の松井府知事と吉村市長が選ばれ、それが現在へと続く体制となっています。

大阪維新の会は今年で10周年ということになります。
10年間、文字通り大阪を主導してきました。
しかし、いつまでも支持を得られ続けるわけではありません。

橋下氏や松井現市長、吉村現府知事のようなカリスマ性のある人物がこの先出てくるとも限らないのです。
そんな不安のある未来に託すより、いま勢いのある内に都構想を実現してしまいたい、そうした本音が党内にも存在するようです。

野党が強くなる前に

もうひとつ、このタイミングで都構想にこだわるのには、野党がまとまっていないという状況も有利と見ているようです。

大阪維新の会が躍進したため、自民党や公明党は野党となりました。
打倒大阪維新の会、反都構想を掲げてはいるものの、足並みは揃っていません
前回、そして今回も都構想の住民投票実施まで漕ぎ着けることが出来ているのは、野党が必ずしも一致団結しているとは言えないからとも言えます。

実際に今回の住民投票を決める議決では、公明党は国政選挙で大阪維新の会とぶつかることを恐れて都構想に賛成しました。自民党では最終的に大阪府連が都構想反対を打ち出しましたが、打ち出すまでには多くの議論がなされたようです。

大阪維新の会としては、このように野党がまとまっていない内に都構想を実現してしまいたい。

そうした政治的駆け引きも存在しているようです。

大阪・関西万博の影

2025年に大阪・関西万博が決定

2018年、フランスで博覧会国際事務局による総会が行われ、そこで2025年に大阪・関西万博の開催が決定しました。

万博は国内・国際問わず大きな注目を集めることとなり、経済への波及効果も膨大なものとなります。
また観光地としての人気や国際会議などの開催地としての知名度も上げることができます。

2025年に開催される万博の存在は、まさに大阪の将来を左右する一大イベントと言えるでしょう。

都構想と万博の密な関係

そうした大きな注目を集める万博を控え、その効果を最大限に引き出すために、2025年までに都構想を行いたいとの思惑も存在しているようです。

実際に都構想を行うためには、準備・移行期間が必要なため、2025年に実施するためには出来るだけ早く都構想の実現を決定してしまう必要があります。
実際に今回の住民投票で可決した場合、実施は2025年の元旦からとなっています。

予定からも2025年を大阪にとって新しい年にしたいという強い気迫が感じられます。
大阪を観光地や国際会議等の候補地として認識してもらうには当然、治安や交通の便などが優れていることが要求されます。
そのためにはやはり一貫した政策のもとでの都市計画が出来ることをアピールしなくてはいけません。

今年に住民投票を実施するという意味には、万博とのそうした事情も関わっているのです。

まとめ

 大阪都構想は本当にいま必要なのでしょうか?
果たしてこんなにも労力をかけてやる必要はあるのでしょうか?
11月1日の投票で都構想実施の可否は決まります。 この記事が少しでも都構想について考えるきっかけとなれば幸いです。