2020.09.11
都構想調査委員会

政令指定都市を廃止して、特別区に分割・設置するための手続きはどのように定められたのでしょうか。まず、特別区を設置しようとする関係市町村及び関係道府県は「特別区設置協定書(以下、「協定書」と略)」を作成する「特別区設置協議会(以下、「法定協議会」と略)」を設置します。政令市を廃止して、特別区を設置しようという市町村は大阪市、道府県は大阪府しかありませんから、以降は関係市町村を大阪市、関係道府県を大阪府とします。

(外部リンク)大阪府:特別区設置協定書(案)

特別区設置協定書

令和2年9月4日に、大阪市長及び大阪府知事から大阪市会及び大阪府議会が特別区設置協定書を承認した旨の通知を受けましたので、大都市地域における特別区の設置に関する法律(平成24年法律

住民投票は「最後のジャッジ」

法定協議会は総務大臣との事前協議を経て、協定書がまとまった場合、大阪市長及び大阪府知事に報告します。報告を受けた大阪市長及び大阪府知事は協定書に総務大臣の意見書を付し、速やかに大阪市議会と大阪府議会に付議し承認を求めなければなりません(出席議員の二分の一以上の賛成で議決)。

次に知事、市長はその結果を法定協議会に伝えます。もちろんいずれかもしくは両方の議会で協定書が「否決」されたときは、政令市の廃止及び特別区への分割、設置は議会によって「否決」されたことになります。両議会が賛成多数で「議決」した場合のみ次のステップに進みます。

そして最後のステップが「住民投票」です。法定協議会は府知事、大阪市長の両方から「議決」の報告を受けた日(「基準日」)を大阪市選挙管理委員会及び総務大臣に通知します。併せて協定書を公表します。

そして選挙管理委員会は基準日から60日以内に、特別区の設置について選挙人の投票に付さなければならないと定められています。有効投票総数の過半数の賛成で可決(大阪市廃止決定)、反対で否決(大阪市存続決定)です。

大阪市が存続するか、廃止されるか。住民投票は、まさに「最後のジャッジ」です。

「特別区設置協定書」には何が書かれているの?

住民投票は大阪市民に大阪市を廃止して、特別区を設置することの是非を問うものですが、それだけ問われても判断できないという有権者が圧倒的多数ではないでしょうか。

特別区とは何なのか、その制度設計をはっきり示してもらわなければ判断できません。それが書かれているのが「特別区設置協定書」です。いわば商品の「内容説明書」であり、「保証書」でもあります。

つまり住民投票において賛否を問われるのは、実質的にはこの「特別区設置協定書」です。この協定書に記載しなければならない事項は、特別区設置法第五条に定められています。

(特別区設置協定書の作成)
第五条 特別区設置協定書は、次に掲げる事項について、作成するものとする。
一 特別区の設置の日
二 特別区の名称及び区域
三 特別区の設置に伴う財産処分に関する事項
四 特別区の議会の議員の定数
五 特別区とこれを包括する道府県の事務の分担に関する事項
六 特別区とこれを包括する道府県の税源の配分及び財政の調整に関する事項
七 関係市町村及び関係道府県の職員の移管に関する事項
八 前各号に掲げるもののほか、特別区の設置に関し必要な事項

外部リンク
総務省:大都市地域における特別区の設置に関する法律(平成24年法律第80号)概要 P.2

2015年5月17日の住民投票においてもこの条文に沿って協定書がまとめられ、反対多数で「否決」されました。

今年の11月1日に実施される住民投票においても新しい協定書が示されます。その案は2020年6月19日に開催された第35回法定協議会で議決されました。

吉村知事や松井市長は今回の協定書は前回のものをバージョンアップしたものだと胸を張っています。前回の協定書より大阪市民にとって良いものになったのでしょうか。冷静に両者を比較して、別記事で検討してみたいと思います。