大阪メトロの経営状況に左右される特別区財政

2020.10.31
  • 特別区の黒字の大半が大阪メトロの配当金によるもの
  • コロナ影響を全く盛り込んでいない大阪メトロ収益
  • 大阪メトロ側はこのことを知らず
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今回の住民投票に際して、特別区の財政は黒字で大丈夫という前提の財政シミュレーションが示され、グラフが各家庭に配布の説明にも掲載されています。

しかしこの試算にはたいへんな欺瞞が隠されています。

特別区の黒字の大半が大阪メトロの配当金によるもの

この黒字、大変な欺瞞が発覚しました。
大阪メトロの配当金をあてにしており、その黒字の大半が大阪メトロ配当金というのです。

大阪市議会で自民党の前田市議が暴きました。

メトロ収益悪化 都構想に影響か 財政見通し懸念

 財政シミュレーションは、都構想の制度案(協定書)に明記された「住民サービス維持」の財政的根拠で、特別区移行後の2025年度~39年度までを試算している。収益面の改革効果額の大部分を、大阪メトロの配当と税収が占めており、25年度は53億円、26年度以降は71億円を4特別区の収入として積み増している。
 同社が19年に策定した中期経営計画の目標値が金額のベースで、今年改定の計画では新型コロナウイルス感染拡大の影響で目標額を記載していない。
 前田市議は「メトロは今後の業績予測は未定、中期経営計画は抜本的に見直すと表明している。改革効果額の9割は地下鉄で、25年度まで業績が伸び続ける計画では、結果的に市民をだますことにつながる。財政シュミレーションのやり直しを」と迫った。

https://www.nnn.co.jp/dainichi/news/200827/20200827023.html

年間71億円大阪メトロから配当金収入がある前提というのです。
それが財政効果額の9割を占めるというのだから、メトロ配当金なんて大阪市廃止→特別区×4設置の効果とは関係が無く、恐ろしいペテンです。

「大阪市廃止による財政効果額は無い」に等しいことが既に市議会では発覚しています。

しかしその報道がほとんどなされていませんので、多くの市民は知らないままではないでしょうか?

コロナ影響を全く盛り込んでいない大阪メトロ収益

さらに問題なことに、この大阪メトロの配当金というのは「コロナ」前なのです。全く実態に即した数字でないことは明らかです。

大阪メトロ依存など焦点 26日委員会で議論へ

 財政シミュレーションにおいて、依存する大阪メトロの収益についても「20年度第1四半期決算は、営業収益マイナス42・4%と大幅に悪化しているにもかかわらず、(地下鉄民営化効果額を)78億円も好転させている」と財政運営の危うさを指摘している。

https://www.nnn.co.jp/dainichi/news/200825/20200825028.html

大阪都構想 財政試算に不確定要素 税収増想定もコロナ影響盛り込まず

市を廃止・分割しても、新たにできる4特別区とも収支不足(赤字)にはならないとする財政シミュレーションをまとめている。財政問題は有権者にとって大きな判断材料となるが、新型コロナウイルスの影響を一部しか反映していないため、反対派は「試算は楽観的すぎる」と批判している。
(中略)
【頼みの大阪メトロ、赤字に】
 黒字を押し上げているのは、民営化された市営地下鉄の株式を市が100%保有する大阪メトロからの税収と配当だ。同社の中期経営計画を基に、配当と税収が年71億円に達すると見込み、期間中、改革効果額として盛り込んだ。しかし、同社は緊急事態宣言などの影響で、4~6月期の営業収益が前年比で42%減。本業のもうけを示す営業損益が62億円の赤字で、中期経営計画も白紙になった。
 自民党や共産党は市議会で「税収や配当が今より増えるというのは、市民をだますことにつながる」と再試算を求めたが、松井一郎市長は「時期に多少のずれはあるが、業績は回復する」として見直さない考えを示した。

https://mainichi.jp/articles/20201020/k00/00m/040/133000c

また、コロナ禍が過ぎればこれが元に戻るという考えも間違いで、鉄道各社はリモートワークなど生活スタイル自体の変化により、元には戻らないとしています

JR東日本の見解

 JR東日本の深澤祐二社長は3日の定例会見で、「ポストコロナ」社会に向けた会社の方向性について言及し、「感染流行が収束した後も、鉄道利用の水準は元には戻らないと考えている」と述べ

https://news.kotsu.co.jp/Contents/20200907/78bbd51e-e9a6-43e0-8184-4017c3b2763f

松井一郎市長の言ってることは楽観的すぎ、全く実態に即していません。
大阪メトロ依存は危険なことですし、財政シミュレーションの数字は実態とかけ離れたものです。

大阪メトロ側はこのことを知らず

さらに酷い実態が明らかになしました。
なんと大阪メトロ側は自社の収益予想が副首都推進局になされ、特別区の財政維持の根拠とされていることを全く知らなかったというのです。

「都構想」黒字収支の根拠に大阪メトロの配当金 メトロ社長「知らなかった」

 いわゆる「大阪都構想」の制度移行後、「財政が黒字になる」と大阪府市が試算した根拠として、大阪メトロの収益が大きく見込まれていることについて、大阪メトロの河井社長は7日、「メディアから問い合わせがあるまで知らなかった」と明らかにしました。
(中略)
 大阪府市が試算した2025年の制度移行後の、15年間の4つの区の「財政」の見通しについて、自民党・前田和彦市議が言及。「(特別区の)収支が黒字となる根拠として、新型コロナウイルスの影響がなかった去年4月時点での大阪メトロの中期経営計画をもとにした配当金などが大きく見込まれていることを知っていたか」と質問したところ、河井社長は「知らなかった」と回答。

 8月11日に財政の見通しが公表される前に大阪府市から事前に連絡はなく、試算の公表後、メディアからの問い合わせで初めて知ったことを明らかにしました。

 これを受けて、前田市議は「大阪市が勝手に(収益を見込んで)数字を使っていることになるが、(特別区の財政運営が黒字となる)この数字に大阪メトロは責任をもてるのか」と追及。

 大阪メトロの河井社長は「大阪メトロの経営計画は2025年までのものなので、それ以降の見通しはわからない」と答えました。大阪メトロは新型コロナウイルスの影響で、今年4月から6月までの営業収益が前の年に比べて約42%減少し、62億円の赤字となっています。

https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/abc_7793.html

勝手にコロナ前の試算であるだけでなく、大阪メトロが中期計画として出している先まで勝手に副首都推進局が企業業績を予想立てて財政シミュレーションに盛り込んでるというのです。

ありえない!一企業の業績に左右される特別区

数字の頼りなさもさることながら、たった1企業の業績が特別区の財政を左右する。そんな都市がこの規模の大都市でありえますか?

この一点のみだけでも今回の特別区案がありえない試算に基づいて設計されていることは明らかです。

企業の業績予想などいくらでも狂いうるものなのは常識です。
企業の業績予想が常に正しいのならばシャープもどこも破綻していません。
ましてや大阪メトロは夢洲に1000億円のタワービルを建てる計画など、大規模出資を予定しておりリスクは高いです。

大阪メトロ、万博会場の夢洲にタワービル 1000億円超
大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)は20日、2024年開業予定の夢洲(ゆめしま)駅の近くにタワービルを建設すると発表した。総工費は1000億円超で、24年の開業を目指す。ホテルやオフィス、商業施設が入る。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39204260Q8A221C1LKA000/

夢洲は、ATCやWTCのある咲州より、さらに先にある埋め立て島です。
WTCなどのオフィス需要が「遠くて通勤に不便」なため思うようにいかず失敗した先例をどう考えているのか疑問です。

先ほども書いたようにコロナ後にも生活スタイル変わって収益が伸びるとも思えず
米中摩擦などもあり、インバウンド需要の伸びもどうなるか分かりません。
また今後も今回のような大規模感染症が発生する可能性は無いと言い切れますか?

この一社の収益に依存する体制は大変に危うい話です。
非常に特別区の財政が脆弱ゆえにこのようなことが起こります。
そのリスクを有権者は真剣に考え、投票行動をせねばなりません。